【SACD】ブラームス:ドイツ・レクイエム /鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン

 清らかな合唱と木管が柔らかく重なり、その旋律は滑らかな曲線を描く。ピリオド楽器による演奏だ。その音色は後期ロマン派の艶はないものの、決してモノトーンではない。中間色が豊富な色彩なのだ。透明感があるバランスで、ハープの響きもよく聴こえてくる。クプファーの晴れやかなバリトン、安川の透き通ったソプラノもオーケストラによく溶け込む。バッハの大家といわれる鈴木雅明だが、その根元にはロマン派への強い愛情があることがこの演奏からは伝わってこよう。キリスト教の範疇を超えて普遍性を目指したブラームスの考えに沿った演奏を導いたのは、そんな愛情かもしれない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年7月号より)

【information】
SACD『ブラームス:ドイツ・レクイエム /鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン』

ブラームス:ドイツ・レクイエム

安川みく(ソプラノ)
ヨッヘン・クプファー(バスバリトン)
バッハ・コレギウム・ジャパン
鈴木雅明(指揮)

BIS/ナクソス・ジャパン
NYCX-10530 ¥3520(税込)


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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