2026年2月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。
[以下、ぶらあぼ2025年11月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 今年も、毎年恒例の独OPERNWELT誌の年間最優秀賞(2024/25シーズン)が発表になった。主要な受賞は、オペラハウスがチューリヒ歌劇場、最優秀歌手にはエレオノーラ・ブラットとボグダン・ヴォルコフ、最優秀指揮者はキリル・ペトレンコ、最優秀演出家はトビアス・クラッツァー、最優秀オーケストラはバイエルン州立管、フランクフルト・オーパー・ウント・ムゼウム管、マイニンゲン・ホーフカペレといったところだが、同誌のホームページでは全体の一部分しか閲覧できないので、本誌入手後の来月の本欄でさらに補足したい。

 なお、昨年同様、今月の本文中に「メトロポリタン歌劇場」の掲載がないのは、もともと2月に公演がないためなので、ご了解のほど。

 さて、これも昨年と同じ記述で恐縮だが、例年2月は現代音楽関係のコンサートが目立つ。例えば、フランス国立管やフランス国立放送フィルが参加する「フェスティバル・プレザンス2026」とか、SWR響の参加する「ECLAT現代音楽フェスティバル」などがそれ。現代音楽祭と銘打っていなくとも、バイエルン放送響でラトルが振るヘンツェのオラトリオ「メデューサの筏」とか、ミュンヘン・フィルでラブマンの振るライヒ、ナッセン、ジョン・アダムズの演奏会など、かなり尖った公演もある。

 オペラでも、1993年生まれのセバスティアン・シュヴァプによる「気候変動オペラ」と題されたグリム童話に基づくオペラ「ホレ!」(アン・デア・ウィーン劇場)や、ハンブルク州立歌劇場のノイヴィルトの新作「モンスターのパラダイス」、エッセン歌劇場のE.アンドレ「フリズヨフ=サガ」などの世界初演が並ぶ。

 その他のオペラでも、ウィーン国立歌劇場のヴェルディ「ルイザ・ミラー」、アン・デア・ウィーン劇場のガスマン「オペラ・セリア」、ベルリン州立歌劇場のヤナーチェク「利口な女狐の物語」(ラトル指揮)、バイエルン州立歌劇場のグノー「ファウスト」、シュトゥットガルト歌劇場のワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、チューリヒ歌劇場のヒンデミット「カルディヤック」(ルイージ指揮)、ミラノ・スカラ座のワーグナー「神々の黄昏」、ローマ歌劇場のロンケッティ「インフェルノ」、トリノ王立歌劇場のヴェルディ「マクベス」(ムーティ指揮)、リセウ大劇場のポンキエッリ「ラ・ジョコンダ」など多士済々なプレミエ公演が続く。だが、希少オペラに関心のある向きには、1月から続く公演も含め、ベルリン・ドイツ・オペラのコルンゴルト「ヴィオランタ」、シュレーカー「宝を探す男」(「宝捜し」と呼ばれることもあり)、フランクフルト歌劇場のヴァインベルク「パサジェルカ」あたりが2月の最重要演目となるかもしれない。

 オーケストラでは、まず、ティーレマンがシュターツカペレ・ベルリンを指揮する「はるかなラジオ時代の音楽」と称する特別演奏会が面白い。同オケのホームページでは「オーケストラとその音楽総監督が、ラジオの前に座ってその音に耳を傾けていた時代、つまり交響曲とジャズが融合し、リズミカルなエネルギーと熱狂的な活気に溢れた、コンサートホールだけでなくサロンやダンスフロアも思い起こさせるような音楽を探求する」と紹介されている。この手の曲はティーレマンの得意なところでもあろう。また、ソヒエフのファンにとっては、2月はベルリン・フィルとバイエルン放送響というドイツのメジャー・オケ2つを立て続けに振ってくれるというのが嬉しいかも。ウェルザー=メストがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管でハイドンの「四季」を、マルヴィッツがベルリン・コンツェルトハウス管で同「天地創造」を振るハイドンの聴き比べも興味深い。ウィーンのムジークフェラインでは、バレンボイムの手兵であるウェスト・イースタン・ディヴァン管を盟友メータが振る公演もある。ロンドン・フィルはヴァイオリンのアンネ=ゾフィー・ムターをソリストとしたドイツ中心のツアーを行うが、彼女が出演するとチケットはどこでも完売必至。その他、フルシャが故国チェコ・フィルで演奏するヨゼフ・スークの作品群は、地元でなければなかなか聴けない郷土愛に満ちた選曲だ。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)