モーツァルトをはじめ、古典派の作曲家のスペシャリストとして活躍するピアニストの久元祐子。彼女は2023年からベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲演奏会に挑んでおり、本盤は昨年行われた第2回のライブ録音となっている。プログラムには第3・10・13番、そして第14番「月光」が選ばれた。いずれも当時の楽器の限界に挑んだ作品であり、1795年製のアントン・ヴァルターの復元楽器で奏でられたことで、その特別さをより強く実感できることだろう。久元の精緻な技術とニュアンスに富んだ音色はそれをさらに輝かせており、作品の新たな魅力にも数多く出会えるはずだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年6月号より)
【information】
配信『久元祐子 ベートーヴェン・ツィクルス Vol.2』
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第10番、同第3番、同第13番、同第14番「月光」/モーツァルト:幻想曲 K.397、ピアノ・ソナタ K.331より第3楽章「トルコ行進曲」/J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻より第1番
久元祐子(ピアノ)
収録:2024年9月、サントリーホール ブルーローズ(小)(ライブ)
コジマ録音
ALM-9280