
右:アンナ・ツィブレヴァ ©Anna Gryzlova
東響におけるウルバンスキの演奏は常に新鮮で刺激的だった。それは彼が既成概念を排したアプローチで楽曲を再構築するからだ。1982年ポーランド生まれのウルバンスキは、様々なポストを経て、現在ワルシャワ・フィルの音楽・芸術監督、ベルン響の首席指揮者等を務めており、2012〜16年には東響の首席客演指揮者として多大なインパクトを残している。その彼が都響と初共演を果たす。稀有の鬼才が高い機能性を誇る同楽団を振っていかなる音楽を聴かせるのか? すこぶる興味深い。
プログラムは、まず縁の深い自国の大家ペンデレツキの代表作「広島の犠牲者に捧げる哀歌」。激烈な響きに貫かれた本作は、52の弦楽器群による楽曲だけに都響の重層的な弦楽サウンドが存分に生かされる。むろん戦後80年に思いを巡らせる意義深い選曲でもある。おつぎはショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番。メロディアスで軽妙な本作は、「広島〜」の僅か3年前(1957年)に作曲されており、その対照が耳を奪う。同曲では15年リーズ国際ピアノコンクールで優勝後、世界的に活躍するロシア出身の名手アンナ・ツィブレヴァがソロを弾くので、こちらも大注目だ。そして後半はショスタコーヴィチの交響曲第5番。お馴染みの名曲だが、ウルバンスキは、以前首席客演指揮者を務めたNDRエルプフィルとのCDで、明快な曲に潜む悲劇性を描出した凄演を展開しているだけに、新たな視点による名演に期待がかかる。
表面上はショスタコーヴィチ没後50年を記念した公演だが、これ実は終始耳を離せない意味深長なコンサートだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年5月号より)
クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京都交響楽団
第1021回 定期演奏会Bシリーズ
2025.5/16(金)19:00
都響スペシャル
2025.5/17(土)14:00
サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp