高橋悠治の約50年前のLPの復刻。ケージとバッハの貴重な音源だ。「メタモルフォシス」は、20代半ばの若きケージの意欲作。12音セリー主題を使って、冒頭の和音の強打からエネルギーが爆発する。5楽章のうち、遅い第3楽章が巨大で凝っている。どこからも下行跳躍の主題が聴こえてくる。「ザ・シーズンズ」は、パートナーでダンサーのカニンガムのためのバレエ曲。インドの季節感を基調に、冬から冬へ一巡するまでを音楽化する。頂点の秋(破壊)で金属音のような和音の打ち込みがある。「チープ・イミテーション」は単音で子どもが弾いているような曲。バッハのトッカータ第2番は自在なテンポとアゴーギクでとても面白い。
文:横原千史
(ぶらあぼ2025年5月号より)
【information】
CD『シーズンズ/高橋悠治』
ジョン・ケージ:チープ・イミテーション(抜粋)、メタモルフォシス、ザ・シーズンズ 1幕のバレエのための/J.S.バッハ:トッカータ第2番 ハ短調
高橋悠治(ピアノ)
コジマ録音
ALM-14 ¥3080(税込)