ピアニスト近藤伸子が旧東京音楽学校奏楽堂でバッハの新シリーズ始動

 J.S.バッハやベートーヴェン、そして現代音楽を主軸に理知的なピアノ演奏を届ける近藤伸子が、この5月から新しいコンサート・シリーズ「歴史的建築物で聴くバッハ」をスタートする。記念すべき第一回の建築物は、1890(明治23)年に東京音楽学校(東京藝術大学の前身)の校舎として建設された旧東京音楽学校奏楽堂である。日本最古の洋楽ホールとして知られる奏楽堂は、日本で初めて本格的なオペラが上演されたホールであり、1988年には重要文化財に指定され、保存・活用されている。

 このホールで、今回近藤が演奏するのは、まさに音楽の建造物とも言えるJ.S.バッハの「フーガの技法」全曲である。複数の旋律を重ね、立体的に構築してゆく対位法を追求したバッハ晩年の作品で、抽象的な美しさを宿した傑作だ。洋楽受容の黎明期にも思いを馳せながら、近藤伸子の知性と感性の光る演奏と、深淵なバッハの宇宙に浸りたい。

文:飯田有抄
(ぶらあぼ2025年5月号より)

近藤伸子ピアノリサイタル – 歴史的建築物で聴くバッハ I
2025.5/2(金)18:30 旧東京音楽学校奏楽堂
問:東京コンサーツ03-3200-9755
https://www.tokyo-concerts.co.jp