三浦文彰が宮崎国際音楽祭の音楽監督に就任、チョン・ミョンフンが指揮とピアノで魅せる!

 音楽界の匠・徳永二男から、今をときめく三浦文彰へ。師弟のリレーも美しい。今年30周年を寿(ことほ)ぐ宮崎国際音楽祭、まさに新時代へ。

 トップアーティストの「響宴」で知られる宮崎国際音楽祭の音楽監督に、かねてからこのフェスティヴァルの主役として活躍してきたヴァイオリンの三浦文彰が就任した。

三浦文彰 ©Yuji Hori

「第二のふるさととも感じる宮崎」
「音楽の伝統を未来へ繋いでいく音楽祭として、次の世代にも愛され続けることを願い、心に残る感動をお届けします」

 就任の挨拶も私たち音楽好き、宮崎に集う演奏家を喜ばせる。

 祝!第30回宮崎国際音楽祭。メインプログラムは演奏会〔1〕〜〔5〕の5種。ヴァイオリニストにして指揮者、名プロデューサーでもある三浦文彰は、盟友のピアニストで共演も多い辻井伸行を宮崎のステージに誘った。

辻井伸行 ©Yuji Hori

 「新しい地平へ」と題された演奏会〔1〕を彩るのは、名曲にも関わらずライブではそうそうお目にかかれないシューベルトの弦楽三重奏曲第1番、ファン憧れのベートーヴェンの「春」、それに彫りの深い情趣も情熱の発露も素晴らしいブラームスのピアノ四重奏曲第1番。弦トリオ、デュオ、ピアノ・クァルテットを一つのコンサートで楽しめる得難い機会となる。読響ソロ・ヴィオラの鈴木康浩、それにシベリウス・アカデミーと独クロンベルク・アカデミーから羽ばたいたチェロのライジングスター、ヨナタン・ローゼマンの出演に胸ときめく。三浦と辻井が想いを寄せるラヴェル、そしてフランクのヴァイオリン・ソナタをメインとした演奏会〔2〕も満場に感銘を与えることだろう。

鈴木康浩
ヨナタン・ローゼマン ©Tuomas Tenkane

 演奏と映像が出逢う演奏会〔3〕も新機軸。宮崎国際音楽祭と東京藝術大学大学院映像研究科のコラボレーションによるヴィヴァルディ「四季」で、4人のソリストの妙技もさることながら、AI技術を駆使した「映像同期上映システム」によるアニメーションが楽しみ。ライブ・パフォーマンスのテンポの変幻に応じて映像が映し出されるという。描写もテーマとなるバロック音楽とアニメーションの相乗効果が待たれる。これは体感しなければ。

 チョン・ミョンフンのすべてを味わえる演奏会〔4〕〔5〕に喝采を。チョン・ミョンフンは今年、東京フィル定期でもベートーヴェンのピアノ、ヴァイオリン、チェロのための協奏曲でピアノを弾き、タクトを執ったが、ブラームスが生涯にわたって大切にしたピアノ三重奏曲第1番と、コントラバスを交えたシューベルトの「ます」への期待は、まさに限りない。美や夢の世界に憧れる「歌う」ピアニズムも烈しいドラマもホールを満たすことだろう。チケットの争奪戦が発生しそうである。

チョン・ミョンフン ©ヴィヴァーチェ

 ブラームスが南オーストリアの湖畔の避暑地で紡いだニ長調の逸品、ヴァイオリン協奏曲と交響曲第2番を仲立ちとした三浦文彰とチョン・ミョンフンの交歓。それに30年の歩みをステージと客席で分かち合うベートーヴェンの交響曲第9番─30周年記念演奏会─に、野暮なコメントは不要だろう。文字通り多彩で特別なスペシャルプログラムも宮崎国際音楽祭の自慢。トークも管弦のアンサンブルも忘れずにチェックしておきたいものである。
文:奥田佳道
(ぶらあぼ2025年5月号より)

第30回 宮崎国際音楽祭
2025.4/20(日)~5/18(日) メディキット県民文化センター 他
問:宮崎国際音楽祭事務局0985-28-3208 
https://mmfes.jp
※各公演、チケット発売状況の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

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