GW恒例!横山幸雄「入魂のショパンVol.16」作曲家の詩情が一日を彩る

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 彼の背中を押し続けるのは、探究心か、使命感か。ゴールデンウィーク恒例となったピアニスト横山幸雄の「入魂のショパン」は、今回でVol.16を迎える。

 シリーズ序盤でショパンの全ピアノ作品を一度に網羅するという大仕事を成し遂げたあとは、少しずつアプローチや趣向を変えながら、ショパンの全体像を捉える試みを続けてきた。弾くほうはもちろん、聴くほうも体力を要す長丁場のシリーズだが、年を重ねてもこれに通い続けることを楽しみに、健康維持に気をつけているというファンもいると聞く。

 その期待に応えて今回、横山が取り上げるのは、ショパンの代表的な大作ばかりをセレクトしたプログラム。

 若き日から晩年まで、人生のさまざまなステージで、ショパンが細かな工夫を織り込み、構成を練り上げ、時間をかけて仕上げた大曲には、マズルカやノクターンのような小品とはまた違った哲学、信念、そして作曲家の野心や夢が反映されているといえる。これらを、協奏曲(独奏版)やソナタなど、ジャンルごとの5つの部に分けて、朝10時から夕方16時半ごろまでじっくりと紹介してゆく。

 どんなときもショパンをライフワークの一つとする信念を貫き、長きにわたって向き合い続けてきた横山。彼の持ち味であるみずみずしくクリアな音が紡ぐショパンは、自然体で、ますます自由度を増し、また次のステップに向かっているといえるだろう。その道すじを追う、年に一度の機会。会場に足を運んで今の演奏を確かめたい。

文:高坂はる香
(ぶらあぼ2025年5月号より)

横山幸雄 ピアノ・リサイタル “入魂のショパン” Vol.16
2025.5/5(月・祝)10:00〜(全5部構成) 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp