声があわさる、かさなる。誰だって声をだす。からだから声をだす。だから声たちのひびきは楽器とはちがったなじみ、したしみを感じる。声の、声のあわさった音楽を、耳を、いや全心身を声のかさなりにかたむけたい。そういうひとにアヌーナを勧めたい。
アヌーナはすでに8回来日しているアイルランドのコーラス・グループ。アイルランドで伝承された音楽をベースとしているが、リーダーにして作曲家のマイケル・マクグリンの手による新しい楽曲をとおして、さまざまな新しい試みを数々おこなっている。
美しい声のひびきに癒される、という言いかたも可能かもしれないが、それだけではない。美しいひびきがどうやってつくられるのかを試行し、ときに不協和音をまぜ、おもいがけない転調をし、奏でられる音楽はひとつの楽曲のなかでも、さまざまに色を変える。もうアイルランド云々とわざわざいわなくてもいいか、ともおもう。それでも敢えて、そう言うのは、詞がゲール語であるからか。よく知らないことばだな、なんておもいわずらわなくていい。ことばは意味より音、うたうための媒体で、重心は声そのものにある。声そのものの力、神秘は、ことばの音と声とはあいまってじかに伝わってくる。
全国で9回の公演が予定されているアヌーナ。東京・すみだトリフォニーホールでは、小泉八雲の『雪女』をテーマに、能舞(津村禮次郎)、大鼓(柿原光博)、笙(東野珠実)を迎え、ステージをつくるという試みもあることを、つけ加えておこう。
文:小沼純一
(ぶらあぼ2024年10月号より)
アヌーナ(コーラス) 来日公演2024
2024.12/7(土)17:30 すみだトリフォニーホール
問:プランクトン03-6273-9307
https://plankton.co.jp
他公演
2024.11/22(金) 西宮、11/23(土・祝) 大阪、11/24(日) 東海、11/26(火) 札幌、11/29(金) 静岡、11/30(土) 横浜、12/1(日) 所沢、12/8(日) 三鷹
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