初めて挑む「夜の歌」で描き出すバッティストーニのマーラー観

アンドレア・バッティストーニ ©上野隆文

 今年、バッティストーニが東京フィルの首席指揮者に就いてから8シーズン目を迎えた。毎回スケールの大きな演奏を繰り広げる若きマエストロは、マーラーの交響曲をこれまで3曲取り上げている。交響曲第1番(2014年1月)、第8番(19年1月)、第5番(22年9月)だ。

 今回は、いよいよ交響曲第7番の登場となる。大曲ながらも、つかみ所に欠ける作品とされたせいか、かつては演奏会では他のマーラー作品と比べ、いささか取り上げにくい交響曲と見なされていたこともあった。近年は、作曲家の優れた管弦楽書法の集大成であり、そのドラマトゥルギーに頼らない幻想性、革新性に脚光が当たり、オーケストラの年間プログラムを華やかに彩る「勝負曲」ともなりつつある。

 バッティストーニ自身も、多彩な魅力がふんだんに詰まった傑作だとして、かねてから指揮したいと思っていた交響曲という。彼らならではの全体の流れの良さのなかに、数々のクセのあるエピソードを念入りに描きつつ、光と闇がシャープなコントラストを成す彫りの深い演奏が堪能できるはずだ。

 そして、チョン・ミョンフンはもちろんのこと、これまでも尾高忠明やダン・エッティンガーらと培ってきたマーラー演奏の伝統をもつ東京フィル。新しい伝説の誕生を期待していいのではないか。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年10月号より)

アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第166回 東京オペラシティ定期シリーズ

2024.11/13(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1008回 オーチャード定期演奏会
11/17(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第1009回 サントリー定期シリーズ
11/19(火)19:00 サントリーホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
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