猪居 謙(ギター)

7年にわたるドイツ留学の集大成

Photo:Junichi Ono
Photo:Junichi Ono
「この約10年、インターネット、特にYouTubeなどの発達で演奏技術を視覚的に学びやすくなったことで、若手ギタリストの台頭と躍進が本当にめざましい」。そう目を細めながら語るのは、世界的ギタリストの福田進一。教育活動にも大変熱心な彼は、才能ある若手に録音機会を与える、マイスター・ミュージックの『福田進一ギター・ディスカバリー・シリーズ』をプロデュースしている。福田がこの度、2013年の小暮浩史に続き、当シリーズの第2弾に指名したのが猪居謙だ。
 猪居は4歳から父の元でギターをはじめ、ドイツ国立フランツ・リスト音大で名教師トーマス・ミュラー=ぺリングに学んだ。14年のスロヴァキア・メルツ国際コンクールで最高位に輝くなど、多くの入賞歴を誇る若手実力派だ。11歳から師弟関係にある福田は、「キャリアも実力も十二分な、まさに旬の逸材。シリーズ第2弾は彼しか考えられませんでした」と太鼓判を押す。
 そんな猪居がデビュー盤『ソナタ・ジョコーサ』の制作にあたってテーマに掲げたのは、「7年にわたるドイツ留学の集大成」だという。
「収録曲(全7曲)は、コンクールなどで留学中に弾き込んだ作品ばかり。表題のロドリーゴ『ソナタ・ジョコーサ』は、13年のコブレンツ国際コンクールで弾いた際に、ロドリーゴ最優秀演奏賞をいただいた思い出の作品です。“ジョコーサ”は日本語で“ひょうきんな”という意味。大阪出身で笑いが好きな僕の性格にもぴったりだと思い、表題に選びました」
 リョベート「ソルの『スペインのフォリア』の主題による変奏曲」など、高度な表現力が求められる難曲を恐ろしいほど冷静に淡々と弾きこなす猪居。そこにはドイツで師事したミュラー=ぺリングの指導が強く影響していると語る。
「日本にいた頃の僕は、直感的に突き進む、いわば弾き散らかす傾向が強かったですね。でも、先生のレッスンはドイツ人ということもあってか、細部まで緻密で分析的。おかげで作品を俯瞰して捉える術を学べました」
 他にも、福田の盟友ブローウェルの名曲「ハープと影〜武満徹への讃歌」を、福田以来、世界で2度目の録音に挑むなど、清々しい覇気に溢れた当盤。5月から7月にかけて、CD発売記念リサイタルを妹とともに全国4ヵ所で行うというから、実に楽しみだ。
「妹の亜美もギタリストで、たまたま同時期に別レーベルからCDデビューするので、一緒に出演します。ただし、デュオではなく、第1部が妹で、第2部が僕のジョイント・リサイタル形式。妹と僕の“聴き比べ”を存分にお楽しみできると思います」
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

猪居謙&亜美 ギター・ジョイントリサイタル
5/27(水)13:30 宗次ホール
問:052-265-1715
5/29(金)19:00 JTアートホールアフィニス 
問:ミリオンコンサート協会03-3501-5638
6/5(金)19:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
問:猪居ギター教室06-6324-2376
7/4(土)19:00 北海道立文学館
問:宮下祥子ギター教室011-683-4227

CD『ソナタ・ジョコーサ〜福田進一 ギター・ディスカバリー・シリーズ』
マイスター・ミュージック
MM-3045 
¥2816+税
3/25(水)発売