中桐 望(ピアノ)

ショパンの心情に寄り添う演奏をめざして

©Shingo Azumaya
©Shingo Azumaya
 中桐望が、ピアニストとして新たな一歩を踏み出した。昨年秋、ポーランドでの留学生活をスタート。1月にはショパンの前奏曲集他を収録したデビュー盤をリリースし、この春その発売記念公演を行う。
 東京芸大大学院在学中の2012年、浜松国際ピアノコンクールで日本人最高位の第2位に輝いた彼女。
「実はこの入賞をきっかけに、奏法や音色について見直すようになりました。審査員の先生方から多くのアドバイスをいただく中で、この賞は、今後の成長への期待をこめて与えられたものなのだと。このまま変わらなければ世界では通用しない。そう感じたのです」
 さらなる研鑽の場としてポーランドを選んだのは、「大好きなのに苦手意識があった」ショパンの演奏を磨きたいという想いから。ポーランドの名ピアニスト、エヴァ・ポブウォツカのもと学んでいる。
「先生のレッスンは厳しく、そして愛があります。ショパンの演奏における正しいフレージングやレガートについて徹底的に教えてくださり、ときにはマズルカのリズムを説明するため、手を取って一緒に踊ってくれることもあります」
 録音では、これから留学というタイミングであえてショパンを、それも前奏曲集という奥の深い作品を取り上げたわけだが、そこには大きな覚悟があった。
「ショパンを弾くには、音楽の心情に寄り添うことが大切だと感じます。前奏曲集は、そのうえで、弾き手がある程度自分の想いを込めることが許されていると思うのです。ショパンを録音するなら、瞬間に生まれるインスピレーションを充分活かすことができる前奏曲集をと思いました。難しい作品ですから悩みましたが、留学スタート地点の記録として、また挑戦の意味も込めて、録音を決心したのです」
 アルバムの発売記念リサイタルでは、その前奏曲集やピアノ協奏曲第2番の室内楽編曲版などを取り上げる(3/25は別プログラム)。
「今は、経験する全てのことが吸収されて身になっている実感があります。凍えるようなポーランドの寒ささえとても嬉しい(笑)。演奏会の頃には、よりポーランドのエッセンスを取り入れ、演奏に反映できるようになっていたいと思います」
 今年10月には5年に1度のショパンコンクールがある。浜松コンクール上位2位は予備審査免除となるチャンスも活かし、憧れの舞台に挑むつもりだ。
「前回は応募することすら考えなかったのですが、最近、やはりこのコンクールは自分にとって大きな憧れだと気付いたのです。結果は気にせず、まずはコンクールを今年の目標に一歩ずつ成長していきたいです」
 ショパンの心に寄り添う演奏に、大いに期待したい。
取材・文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)

中桐 望 ピアノ・リサイタル 〜デビュー・アルバム発売記念〜
3/25(水)11:00 ザ・シンフォニーホール
問:ザ・シンフォニーチケットセンター06-6453-2333
3/29(日)14:00 岡山県立美術館ホール
4/8(水)19:00 浜離宮朝日ホール
問:ART∞LINKS 050-3681-1068 
http://www.artlinx.jp

他公演 
3/12(木)大田区民ホール・アプリコ
3/16(月)宗次ホール
4/1(水)西条市総合文化会館(小)
問:ART∞LINKS 050-3681-1068

CD『ショパン&ラフマニノフ』
オクタヴィア・レコード
OVCT-00110
¥3,000+税