ミカ・ストルツマン(マリンバ)

世界的アーティストたちがアニバーサリーを祝福する!

©Lisa-Marie Mazzucco

 アメリカを拠点に活躍する日本人マリンバ奏者、ミカ・ストルツマンの25周年記念リサイタル。

 「トロントの留学から帰ってきて東京とニューヨークでリサイタルをしてから25年。レパートリーは少しずつ変わってきていて、最初の頃は多くのマリンバ奏者がレパートリーにしているような、スティーヴ・ライヒとか一柳慧とか、現代音楽の作品を弾いていました。その後2008年にニューヨークに移住したのはジャズを勉強するため。リチャード(クラリネット奏者のリチャード・ストルツマン)と結婚したのが2012年で、それからは彼と同じようにクラシックにもフォーカスして演奏するようになりました」

 今回のプログラムの中心となるのは人気ジャズ作曲家・挾間美帆のマリンバ協奏曲世界初演。

 「曲名を『マリンバ協奏曲』とするか『マリンバとクラリネットのための協奏曲』とするか、いま挾間さんとも相談中。両方の楽器がソロで活躍します。オーケストラは1管編成でドラムとベースが加わるのですが、今回の浜離宮朝日ホールでの公演はオケ・パートをエレクトーンで渡辺睦樹さんに弾いてもらいます。エレクトーンで弾くなら彼しかいません。熊本と大分公演では小編成オケと協演します」

 クラリネットはもちろんリチャード・ストルツマン。アメリカではすでに、ボストン交響楽団のメンバーを中心に編成したオケと録音済みで、ドラムにスティーヴ・ガッド、ベースにエディ・ゴメスという、いつもながらジャズ界の巨人たちとのセッションとなった。スティーヴ・ガッドは今回の公演にも出演する。

 「普通、ドラムって、コンサートホールで叩くとどうしてもうるさくなるんですけど、彼は絶対にそういうことがない。そこがやっぱりすごいです。ばっちり準備してきますしね。ステップス・アヘッドというフュージョン・バンドでスティーヴと一緒にやっている私のジャズの先生でヴィブラフォン奏者のマイク・マイニエリが言ってました。伝説のバディ・リッチとスティーヴ・ガッドは同じぐらいグレイトだけど、スティーヴは人間性も素晴らしいって(笑)」

 もうひとつ軸となるのが、近年彼女のライフワークとなったバッハ。「シャコンヌ」を演奏する。

 「6年ぐらい演奏していますが、まだまだ学んでいます。すべての音は身体に入っていて、出ていってしまうことはないのですが、バッハが怖いのは、一人で演奏している時とお客さんの前で弾く時とで変わるんですね。邪念が入るというか。人に聴かせようと思ったらダメ。わかってはいるんだけど、そのメンタリティというか、自分との戦いです。一生演奏し続けたいと思います。今年82歳のリチャードも、毎日必ず『半音階的幻想曲とフーガ』を吹いていますよ。深いですね」

 ソプラノ歌手の田中彩子がゲスト出演するのはやや意外な顔合わせ。自身の最新アルバムでも歌っているチック・コリアの「クリスタル・サイレンス」を歌う。

 「SNSで私とリチャードの演奏を見て、一緒に演奏してみたいと彼女から連絡をくれました。『クリスタル・サイレンス』はもともと私が薦めたんですよ。チックが、奥さんのゲイル・モランというシンガーのために、歌とピアノ伴奏用に書いた楽譜をたくさんくれたんです。ゲイルはハイ・ソプラノなので田中さんに絶対に合うと思って」

 他にも塩谷哲(ピアノ)、井上陽介(ベース)と気心知れた仲間たちとのメモリアル・ステージ。「やってきたことを自然体で出せるステージになると思います」と力みなく前を見据えている。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2024年8月号より)

ミカ・ストルツマン デビュー25周年記念リサイタル
2024.9/24(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問:クレオム info@creomu.com
https://creomu.com

他公演
2024.10/4(金) 熊本/市民会館シアーズホーム夢ホール
10/6(日) 大分/竹田市総合文化ホール グランツたけた 廉太郎ホール
問:Comodo arts project 096-288-4635

Billboard Live
2024.9/30(月) 横浜 
10/1(火) 大阪 
10/7(月) 東京
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