ダン・エッティンガー(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

濃密な名作&名演で古巣への帰還を飾る

左:ダン・エッティンガー ©Froehlingsdorf
右:阪田知樹 ©Ayustet

 ダン・エッティンガーが10年ぶりに東京フィル定期に登場する。現在、シュトゥットガルト・フィル、イスラエル・オペラ、ナポリ・サンカルロ劇場等の音楽監督を兼任する彼は、2010年から15年まで東京フィルの常任指揮者を務めた(その後は桂冠指揮者)。在任中は重層的かつ鮮烈な演奏で充足感を与えてくれたが、巨匠の風格を備えた今、充実顕著な東京フィルを指揮して、いかなる音楽を聴かせてくれるか? その成果に注目が集まるし、近年の同楽団定期には稀なドイツ地盤の指揮者との共演が、新鮮な感触をもたらすことへの期待も大きい。

 メインは、今年生誕200年を迎えたブルックナーの中でもポピュラーな交響曲第4番「ロマンティック」。これは東京フィルとの初のブルックナー演奏だが、エッティンガーは「最も指揮した回数が多いから選んだ」と磐石の構えだし、かつての当コンビの重厚で濃密なトーンからも名演の予感が漂う。

 前半の演目、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番も、自身名ピアニストだったエッティンガーに相応しい。独奏は阪田知樹。16年フランツ・リスト国際ピアノコンクール優勝以来、内外で活躍を続ける彼は、的確な打鍵で雄弁な音楽を奏でる、俊英世代屈指の実力者だ。しかも記念碑的な短調協奏曲=20番は、同作曲家の権威だった恩師バドゥラ=スコダのもとで最初に学んだモーツァルト協奏曲だというから、これもぜひ聴いてみたい。

 「今、両者が再び巡り合い、ブルックナーとモーツァルトを演奏するのは絶対、特別な瞬間となる」と語るエッティンガー。久々の本格コラボに胸が高鳴る。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年7月号より)

第163回 東京オペラシティ定期シリーズ
2024.7/24(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1002回 オーチャード定期演奏会
2024.7/28(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第1003回 サントリー定期シリーズ
2024.7/29(月)19:00 サントリーホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp