スコアの深い読み込みで熱を帯びるこだわりの第8番
ブルックナー生誕200年に当たる2024年。“先代”の飯守泰次郎から東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のブルックナー演奏の伝統を引き継いだ常任指揮者、高関健は9月6日の第372回定期演奏会(東京オペラシティ コンサートホール)で交響曲第8番に挑む。
楽譜の選択にこだわりをみせる高関が採用したのはカナダ出身の音楽学者ポール・ホークショー(1950〜)イェール大学名誉教授が校訂、国際ブルックナー協会が2022年に出版した1887年第1稿・新全集版。従来の1890年第2稿は作曲者自身による削除箇所があり、演奏時間も短くなっている。1972年にレオポルド・ノヴァーク(1904〜91)が第1稿の校訂版を出版して以降、エリアフ・インバルらが指揮してきたが、ホークショー校訂版は細部を検証し直し、アーティキュレーションなどにも多くの違いがあるという。
高関と東京シティ・フィルは今年3月の第368回定期のマーラー交響曲第5番で国際マーラー協会の批判校訂譜2002年版(ペータース版)を採用、ハープを2台置く目新しさにとどまらない優れた解釈で客席を沸かせた。2015年に高関が就任した当初、東京シティ・フィル定期の客入りは決して良くなかったが、3月のマーラー「第5」ではソリストなし、シベリウスの交響詩「タピオラ」との渋い組み合わせだったにもかかわらず「完売御礼」となった。地味にコツコツ、ひたすら楽譜と向き合ってきて迎えたマエストロ69歳の円熟と東京シティ・フィルの献身は「ブル8」でも白熱の演奏を繰り広げることになるだろう。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2024年6月号より)
第372回 定期演奏会
2024.9/6(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp