「ギター界の女王」と称される大ベテラン、グスマンの最新盤はバリオスの名作「大聖堂」を表題に据えた。南米の郷愁を湛えた旋律に始まりキレのあるテクニックで駆け抜ける〈荘厳なアレグロ〉まで貫禄の演奏だ。他にもグスマンの円熟ぶりを示す多彩な楽曲が盛りだくさんで、演奏のそこかしこにセビーリャ生まれの血を感じさせる躍動や哀感が溢れている。自身の編曲によるアルベニスやバッハの古典作に始まり、ピアソラのタンゴを経て、「カッチーニのアヴェ・マリア」やモリコーネの映画音楽まで、誰もが知るメロディをちりばめたサービス精神もうれしい。通から初心者まで幅広く薦めたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年5月号より)
【information】
CD『大聖堂/マリア・エステル・グスマン』
アルベニス(M.E.グスマン編):「イベリア組曲」より〈エル・アルバイシン〉/J.S.バッハ(グスマン編):G線上のアリア/バリオス:大聖堂/ピアソラ(S.アサド編):ブエノスアイレスの春/カッチーニのアヴェ・マリア(V.ヴァヴィロフ作、グスマン編)/モリコーネ(グスマン編):ガブリエルのオーボエ 他
マリア・エステル・グスマン(ギター)
マイスター・ミュージック
MM-4528 ¥3520(税込)