練達の巨匠と盟友たちが生み出す雄大なロマン
東京都交響楽団は6月に第1000回定期演奏会を迎える。そこでこの4月〜8月、ゆかりの深い顔ぶれを中心とする著名指揮者が集結した「1000回記念シリーズ」が行われる。その第2回にあたる第997回定期に登場するのが小泉和裕。一連の豪華指揮者陣の中でも、都響との関わりが特に深いマエストロである。小泉は1976年の初登場以来、都響と50年近い付き合い。その間、首席指揮者やレジデント・コンダクター等のポストを長く歴任し、2014年から終身名誉指揮者の地位にある。つまり両者は盟友的存在だけに、記念シリーズの中でもとりわけ一体感のある名演が期待される。
実際その相性は抜群だ。小泉は、日本人指揮者には珍しく、腰のすわった重厚なサウンドを創造する。音楽作りも、縦割りではなく、流麗で横に幅広いヨーロッパ的な造形を旨としている。その特性が、豊麗で重層的なサウンドを有する都響とマッチし、雄大かつ雄弁な音楽が生み出されていく。それは70歳を超えて円熟味を増したここ数年一層顕著。いまや彼は、都響から濃密・濃厚でまとまりの良い演奏を引き出す、言い換えれば“聴く者に無類の充足感を与える”筆頭格の指揮者なのだ。
今回の演目は、シューベルトの交響曲第7番「未完成」と第8番「ザ・グレート」の二大名作。小泉が得意とする独墺音楽で、しかも“流麗・重厚で幅広い”造形がピッタリの作品だ。ここは、堅牢な構築の中で滔々と歌が流れる、他にはないシューベルト演奏の実現必至。熟達の名匠と高機能で分厚い楽団が奏でる大スケールのロマンを、聴き逃してはならない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年4月号より)
【定期演奏会1000回記念シリーズ(2)】
第997回 定期演奏会Cシリーズ
2024.4/27(土) 14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp