野平一郎音楽監督プロデュースのフェスティヴァルが開催!
3月15日、東京文化会館の2024年度主催事業ラインナップに関する記者発表会が開催され、作曲家・ピアニストで同館音楽監督を務める野平一郎らが登壇した。
まず注目すべきは、野平がプロデュースする新プロジェクト「フェスティヴァル・ランタンポレル」(11/27~12/1)だ。今年は、ベートーヴェン&フィリップ・マヌリ、シューベルト&ヘルムート・ラッヘンマンという組み合わせで、4名の作曲家にフォーカス。この「現代と古典の音楽がクロスオーバーする」というコンセプトは、連携するレ・ヴォルク音楽祭(フランス・ニーム)にならってのことだという。ピリオド/モダン楽器を自在に使い分けるフランスのオーケストラ、レ・シエクルを創立した指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトがプレジデントを務める同音楽祭。今回はレ・ヴォルク弦楽三重奏団を招聘、上野由恵(フルート)や東京文化会館チェンバーオーケストラのメンバーらが共演する(11/27、12/1)。加えて、ピエール・ブーレーズが創設したIRCAM(フランス国立音響音楽研究所、パリ)とも連携。衣笠貞之助監督による幻の無声映画『狂った一頁』(1926年)を、作曲家の平野真由が付した電子音楽とともに上映する(11/29)。この他、日本の若手実力派ピアニスト、阪田知樹と務川慧悟がそれぞれ、先述の作曲家の作品による個性的なプログラムを披露(11/28、11/30)。フォルテピアノでの演奏も予定されているという。
音楽監督として満を持してのプロデュース企画となる本フェスティヴァルについて、野平は次のように想いを語った。
「現代音楽の世界では専門化が進み、イベントもこの分野に強く関心がある人に向けたものが中心になっています。こうした状況の中、一般の方々にも興味を持ってもらえる方法はないか、ということをずっと考えてきました。“ランタンポレル”はフランス語で『時代を超えた』という意味。今回のフェスティヴァルは、その名を体現するようなラインナップになりました。現代音楽に関しては解説を付け、『何を聴いたらよいか』をわかるよう工夫をする予定です。また、古典音楽についても、何万回と演奏されてきた名作をただ演奏するのではなく、一味違う取り組みができれば、と考えています」
名物事業も充実の内容。実験的な舞台芸術作品を発信する「舞台芸術創造事業」では、先述のIRCAMシネマ『狂った一頁』のほか、シューベルト歌曲集の代表的作品のひとつ、「水車屋の美しい娘」を演出家の岩田達宗が“歌劇化”。小森輝彦(バリトン)が歌唱を務めるモノ・オペラとして上演する(11/9)。
2003年以降毎年開催され、優れた演奏家を数多く輩出してきた「東京音楽コンクール」。22回目を迎える2024年度は、弦楽・金管・声楽の3部門が開かれる(第2次予選:8/23~25、本選:8/28~9/1)。入賞者には「上野 de クラシック」「東京文化会館オペラBOX」など、同館の主催事業に出演する機会が多数提供されるため、コンクール後も若手音楽家の歩みを追って楽しめる。
子ども向けの公演にも力を入れる東京文化会館。青少年向けの舞台作品を制作する「シアター・デビュー・プログラム」では新作2作品が上演される。小学生を対象とした『木のこと The TREE』は演劇とジャズのコラボレーション作品。悠久の時を生きる1本の大木をめぐる物語(脚本・演出:ペヤンヌマキ)が、語りや会話(出演:南果歩 他)、音楽(作編曲:林正樹)、舞踏(我妻恵美子)により浮かびあがる(7/12,7/13)。
中高生向けの『ロミオとジュリエット』では、これまでも同館の主催事業に数多く携わってきた人形劇俳優の平常(たいらじょう)&チェリストの宮田大のコンビが、それぞれ脚本・演出・人形操演、音楽構成・選曲を担当。ピアニストの萩原麻未を迎え、シェイクスピア不朽の名作を新たな姿で甦らせる(1/31,2/1)。
他にもおなじみ「夏休み子ども音楽会」(8/17)、「3歳からの楽しいクラシック」(11/2)に、世代や障がいをこえてあらゆる人が楽しめる「リラックス・パフォーマンス」(11/16)も開催。
日本が誇る“音楽の殿堂”として、意欲的な企画を紡ぎ続ける東京文化会館の取り組みから目が離せない。
東京文化会館
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