【SACD】アイデンティティ/三浦謙司

 国内盤として再リリースされた三浦謙司の『アイデンティティ』は、出自の固定に抗うように多彩な音楽を残したフランク、武満徹、ラヴェル、ドビュッシーの作品に向き合う。鋭いほどの透明感に満ちた響きは、シフラが所有したピアノと教会から三浦が丁寧に引き出したもの。減衰音の美しいブレンドを生みながら、個々の作品に応じて時に重く、時に滲み、時に洒脱なタッチで描き分ける。アイデンティティとは、決定され固定され分類されるものではなく、むしろ絶えず問い続ける実態なき流動体なのかもしれない。まるで音楽のように。演奏を聴きながらそんなことを考えさせられた一枚。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年4月号より)

【information】
SACD『アイデンティティ/三浦謙司』

フランク(バウアー編):前奏曲 フーガと変奏曲/武満徹:ロマンス、雨の樹素描II(オリヴィエ・メシアンの追憶に)/ラヴェル:水の戯れ、高雅で感傷的なワルツ/ドビュッシー:6つの古代のエピグラフ、喜びの島/ゴダール:マズルカ第2番

三浦謙司(ピアノ)

ワーナーミュージック・ジャパン
WPCS-13847 ¥3300(税込)