河村尚子が贈る音楽の旅 Vol.1 ~フランス音楽とジャポニズム~

東洋趣味とパリへの憧憬

©Marco Borggreve

 王子ホールで新たに展開されるシリーズ「河村尚子が贈る音楽の旅」が開始する。ソロリサイタルはもちろん、室内楽や協奏曲への出演も非常に多く、近年ますます自身の音楽の幅を広げ深めている河村が、「旅」を主題にプログラミングするシリーズとあって期待が高まる。

 旅の始まりとなるVol.1は、「フランス音楽とジャポニズム」がテーマ。ジャポニズムとは、19世紀の後半に催された万博を通じて日本美術がヨーロッパに紹介されたことを皮切りに、日本文化への関心が世界的に高まったムーヴメントである。とりわけフランスでの日本美術の流行は目覚ましく、楽壇でも強く影響を受けた人物にドビュッシーがいる。自室に葛飾北斎の浮世絵を飾っていたし、蒔絵に描かれた鯉に着想を得て作品も書いた。まさにその曲「黄金の魚」を含む『映像』第2集が、今回の河村のプログラムに組み込まれている。

 だが本公演の曲目は、直接的に日本からの影響を示したり、日本音楽の素材を用いたフランス作品にとどまらない。二国間の音楽的交流をより広義に捉え、「旅」の情景を美しく彩る作品たちが選曲されている。メシアンの初期のピアノ作品や、名教育者ナディア・ブーランジェの残したピアノ曲、ラヴェルの「ソナチネ」のほか、20世紀半ばにパリ音楽院に留学した矢代秋雄のソナタ、武満徹がメシアンを偲んで作曲した「レインツリースケッチⅡ」といったフランスを愛した邦人の作品も並ぶ。繊細美あふれる音楽旅行を楽しみたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年3月号より)

2024.4/10(水)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp