マリー・ジャコ(指揮) 読売日本交響楽団

注目の日本デビューは20世紀の光と影を映す4作品を

左:マリー・ジャコ ©Christian Jungwirth
右:小曽根 真 ©MatsukiKohei

 まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。昨年からウィーン響の首席客演、今年の夏からデンマーク王立劇場の首席、そして2026/27シーズンからはWDR響(旧ケルン放送響)の首席のポストに就くという。今春、この1990年生まれの指揮者は読響を指揮して日本デビューを果たす。

 マリー・ジャコは、バイエルン国立歌劇場でキリル・ペトレンコのアシスタントを務め、ドイツやフランスの歌劇場などでの指揮で頭角を現した新鋭だ。今回は、母国であるフランスをテーマにした20世紀の近代音楽によるプログラムを披露する。

 原曲のオペラがフランス語で書かれた、プロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」組曲でコンサートは始まる。色彩と躍動あふれる表現に期待したい。ラヴェルのピアノ協奏曲は、ソリストに小曽根真を迎え、ジャズのエッセンスを鮮やかに引き出してくれるだろう。プーランクの組曲「典型的動物」は、ドイツ軍による占領下のパリで書かれたバレエ曲が原曲。フランス近代音楽の粋を極めたオーケストレーションのなか、作曲家の隠れたメッセージをジャコはいかに掘り起こすのか。そして、ヴァイルが亡命先のパリで書いた交響曲第2番。ブレヒト・ソングを思わせる歌謡も入り交じり、緊迫感をもってせわしなく変化し続ける。読響の機能性も発揮されよう。

 戦争や亡命を背にして書かれた、多様性をふんだんに含む作品を並べた。清新で示唆に富んだプログラムでデビューするジャコ。期待せずにはいられない。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年3月号より)

第636回 定期演奏会 
2024.3/12(火)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp