ロームシアター京都(京都会館)がオープニング事業主要ラインアップを発表

 2016年に開館する『ロームシアター京都(京都会館)』のオープニング事業内容が9月11日、発表記者会見で明らかになった。会見にはオープニング事業検討委員会委員長を務める指揮者の小澤征爾、門川大作京都市長、検討委員会委員らが出席した。
(Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

左より:門川大作京都市長、小澤征爾、長尾真検討委員会副委員
左より:門川大作京都市長、小澤征爾、長尾真検討委員会副委員

 ロームシアター京都は、昭和35年4月に「京都の文化の殿堂」として開館した旧京都会館をリニューアルするもので、メインホール(旧第一ホール)はオペラなどの総合舞台芸術公演に対応できるよう舞台の奥行や高さを確保、4層バルコニー構造で約2000席を有するホールに生まれ変わる。

 これまで4回の検討委員会を経て決定されたオープニング事業は、これからの50年を見据え、劇場のある空間を中心に劇場文化と生活文化を重ね合わせ、多彩で豊かなライフスタイルを市民とともに実現し、京都に新しい劇場文化を創るため、「創造・育成・交流・生活」の4つをコンセプトの大きな柱としている。すなわち、「世界の人々が集い、創造、発信、交流する国際フェスティバルの開催や世界一流の舞台芸術が鑑賞できる機会提供、世界的国際的な展開」の〈創造〉、「かつての京都会館が、憧れの芸術家と同じ舞台に立つという多くの子ども達や青少年の夢をはぐくんできたように、引き続きロームシアターが次世代に向け、新たな夢を描く機会を提供」する〈育成〉、「全国の舞台芸術創造の拠点と連携し、共同制作や相互交流に積極的に取り組むなど、鑑賞だけでなく、創造発信の拠点」とする〈交流〉、「京都の新たなライフスタイルを提案する多彩なプログラムと、賑わい空間を活用した多彩なイベント 劇場のある空間がしゃれた今となるよう、市民の憩いの場を提供」する〈生活〉。

 これらを背景に、オープニング事業では大幅な機能向上により実現可能となったオペラやバレエをはじめ、京都ならではの伝統芸能、吹奏楽、現代演劇やダンスを取り扱うフェスティバル、ホールに限らず岡崎地区全体を使ったイベントなど様々なジャンルで構成されている。

 2016年1月10日の開館記念公演・記念式典では京都市交響楽団が演奏、続くオープニング事業として、劇団『地点』の三浦基演出による「京都市交響楽団オリジナル・オペラ「フィデリオ」(セミステージ形式)」、小澤征爾指揮による「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIV 京都公演」、ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー「くるみ割り人形」、ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー・オペラ《エフゲニー・オネーギン》(同歌劇場の京都初公演)、「新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 関西公演」などが予定されている。

 「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト」では、メインホールでの喜歌劇《こうもり》のほか、京都市勧業館みやこめっせでは小学生を対象とした「子どものためのオペラ」も開催する。また、これに先がけ2015年3月にはプレ事業としてみやこめっせで「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXⅢ 子どものためのオペラ《子供と魔法》」も行われる。

 会見で門川市長は「小澤征爾さんを初めとする委員のみなさんの熱意溢れる議論が行われた。京都が動く!覚悟せよ!という言葉もいただいた。ロームシアター京都は世界の文化都市の殿堂として国内外の人々に愛されると同時に、多くの市民に愛され、生活のなかに息づく、親しみやすいホールを目指している。開館日も決定した今、気の引き締まる思いだ。文化こそが京都の強み。京都を世界に冠たる文化都市にし、岡崎地域を象徴するのがロームシアターとなるように覚悟を決めて実施していく」と語った。

 小澤征爾委員長は「京都は、自治体として初めてオーケストラを作った。それがいい刺激になって、各都市に拡がっていった。今回のロームシアターもそれと同じ効果を期待している。次の世代につながるものになってくれればいいし、岡崎地域が京都のなかでも、みんなが集まる地域になってくれればいい。ホールは、人が集まる魅力がなければならない。若い人が集まるようにしなければならない」と期待感を表した。

 

 小学生を対象とした「子どものためのオペラ」は、小澤自身ウィーンでは経験があるものの、日本では初の試みとなる。これについて小澤は「ウィーンでは《魔笛》の縮小版を舞踏会と同じ座席を取り払った広い会場でやって大成功している。松本では1992年から毎年中学生に毎年オペラを見せているけど、小学生は今回が初めて。10人に8人は嫌々ながら来る。それでも、帰るときには『おもしろかったなあ』と思ってもらえるようなものにしなければならない。その意気込みでやってきて、ずっと続いている。今回市長からはホールでやってみたらと言われたけど、今度の3月のみやこめっせで今後が決まると思う」とした。

【各委員(氏名・肩書き・備考)からのコメント】

●長尾真(検討委員会副委員、長京都市音楽芸術文化振興財団理事長、元京都大学総長、前国立国会図書館館長・指定管理者/学術)
50年以上にわたって愛されてきたが、本格的な舞台上演も可能なシアターとして生まれ変わる。小澤委員長のもと4回検討してきた。オープニングの1年だけでなく、2年目以降も見据えた方向性を検討いただいた。その後の施設の特性を活かした、今日とならではの伝統を活かしたものと、先端的な事業のバランスの取れたものを取り込む。小澤委員長が日頃から目指されている、次世代に向けた子どもたちのハレの舞台にすること。魅力的なラインアップになっったと自負している。シアター開館の年、京都市交響楽団が60周年を迎える。第2のフランチャイズとして、クラシックだけでなく、その他の分野とのコラボレーションも考えている。

●井上八千代(京舞井上流五世家元・伝統芸能)
小澤さんが委員長になられて、その芸術に対する情熱に引っ張られている。何かやらなければならないという気持ちにさせられている。創造と伝統を伝え、今日との新たな文化を発信する、まだ自分たちも未知のモノをここで観たいという思いにつよくかられている。次世代につなげたいという小澤さんの気持ちを強く感じている。具体的にオープンン語も今日とのために拠点になってほしい、関わったことが誇りになるようにしていきたい。
 

 
●大島祥子(一級建築士、技術士、スーク創世事務所代表、京都岡崎魅力づくり推進協議会事務局マネージャー・市民)
実際に足を運んでもらえるような求心力が問われる。それを意識したラインナップだと思っている。

 

 

 

●津村卓(演劇プロデューサー、北九州芸術劇場館長、地域創造プロデューサー・演劇)
活発な意見のなかで感じたのは、京都が動く、というイメージ、それを感じた。全国の公共ホールとのつきあいのなかで、今回京都に新しいホールができるというで、全国の芸術団体、ホールなどから、相当な注目を集めている。このあとホールがどう続いていくか、責任をもってみていかなければならないし、監視していただきたい。京都市何やってるんだと批判もいただきたい。予算もかかるが、京都ならやれる、日本の公共ホールを引っ張っていけると確信している。
 

 

●建畠晢(京都市芸術大学学長、詩人、京都市芸術文化協会理事長・教育/文化芸術団体)
岡崎はどちらかというと美術中心だった。これからはパフォーマンスアーツが加わる、楽しみにしている。リンカーンセンターに匹敵するものを期待している。

 

 

 

●長屋博久(前京都市PTA連絡協議会会長・市民/保護者)
こどもをもつ親の立場、市民の立場で意見を出した。あこがれの晴れの舞台であってほしい。伝統芸能をいっしょうけんめい学んで発表する場になってほしい。次世代の育成を主眼においてプログラミングいただいた。これからは市民の立場で応援していきたい。

 

 

 

●平竹耕三(京都市文化市民局長・京都市)
市民としてわくわくしている。行政マンとしてはあらためて気を引き締めているところ
委員の期待の大きさがプレッシャーだが、それに応えられるよう努力していきたい。

 

 

 

■クラシック音楽関連の主なオープニング事業
[プレ事業]

●2015年3月26日(木)「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト XⅢ 子どものためのオペラ《こどもと魔法》」
京都市勧業館みやこめっせ

[オープニング事業]

●2016年2月「小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト XIV 京都公演 喜歌劇《こうもり》と「子どものためのオペラ」ほか」
ロームシアター京都メインホールおよび京都市勧業館みやこめっせ
●2016年1月 オペラ《フィデリオ》(セミステージ形式)
・演出:三浦基(劇団『地点』) 指揮:下野竜也 演奏:京都市交響楽団
●2016年10 月 平成28年度 新国立劇場高校生のためのオペラ鑑賞教室 関西公演《フィガロの結婚》
●2016年10月 ゲルギエフ指揮マリインスキー・オペラ《エフゲニー・オネーギン》

ロームシアター京都
http://www.kyoto-ongeibun.jp/rohmtheatrekyoto/

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