バッハ・コレギウム・ジャパン ブラームス《ドイツ・レクイエム》

後期ロマン派を代表する宗教音楽の新たなる地平

左より:鈴木雅明 ©Marco Borggreve/安川みく ©Chin Ryo/ヨッヘン・クプファー

 バッハ没後250年の記念年(2000年)以降、国際的な名声も獲得し、精力的な活動を続ける鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)。世界のピリオド奏法を牽引してきたBCJが、いよいよブラームスの「ドイツ・レクイエム」を披露する。

 ピリオド・アプローチの波は今や20世紀のオペラにまで及んでいるが、BCJのレパートリーとしても、既に手がけているメンデルスゾーンのオラトリオ「エリアス」やシューベルトのミサ曲を経て、ついに19世紀後半の音楽までもが視野に入ってきたことになる。が、ブラームス、とりわけ「ドイツ・レクイエム」は、バッハの名を楽団名に冠するBCJにとって、本来近しい音楽であるに違いない。同作品は19世紀後半を代表する宗教音楽でありながら、歴史主義者ブラームスによる17、18世紀のポリフォニー音楽研究の集大成でもあり、シュッツの音楽やバッハのカンタータとの強い結びつきが確認されるからである。故に「ドイツ・レクイエム」に先立ってシュッツの「主にあって逝く死者は幸せだ」SWV391が演奏されるのは高度に戦略的である。「宗教的合唱曲集」に含まれるこのモテットは、「ドイツ・レクイエム」の第7曲とほぼ歌詞を同じくしている。「ドイツ・レクイエム」は政治的、経済的に混沌とした時代に成立した作品である。ソリストに安川みく、ヨッヘン・クプファーを迎え、BCJが満を持して挑むブラームスは、現下の不穏な国際情勢にあって、普遍的な「慰め」のメッセージともなるはずだ。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年1月号より)

2024.1/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
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