池辺晋一郎の打楽器作品を集めた一枚。各曲の個性が実に多彩で、次々に現れるアイディアは聴き手を飽きさせない。日常性を意識させる即興的な「雨のむこうがわで」に、探検隊が猛獣を生け捕りにするさまを描いた「サファリⅠ」が続き、上野信一による委嘱作「樹の心」を経て、躍動するパルスで俊足の守護神を表現した「テンテンイダテン」で閉じる。演奏はどれもキレがよく、束になった若者たちのエネルギーの発露が爽快だ。上野はフォニックス・レフレクションでの実践的な活動を通じ、数多の優れたパーカッショニストを育ててきた。その活動が現在、満開の花を咲かせていることがよく分かる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年1月号より)
【information】
CD『池辺晋一郎 打楽器作品集/上野信一&フォニックス・レフレクション』
池辺晋一郎:バイヴァランス Ⅶ—2人の打楽器奏者のために、雨のむこうがわで—4人の打楽器奏者のために、サファリⅠ—6人の打楽器奏者のために、樹の心—マリンバ・アンサンブルのために、テンテンイダテン—10人の打楽器奏者のために 他
上野信一&フォニックス・レフレクション
コジマ録音
ALCD-7300 ¥3300(税込)