ゴジラ(!?)と共に記念イヤーを祝う
今年の東京フィルの「第九」は、ひと味違う。なんと組み合わせが、あのゴジラの音楽を含む伊福部昭「SF交響ファンタジー第1番より」。これは、ゴジラ誕生60年、伊福部生誕100年に、ハリウッド映画『GODZILLA』のヒットを絡めた2014年ならではの選曲だが、「第九」公演でのカップリングとしては前代未聞だ。しかも指揮がダン・エッティンガーだから、いやがおうにも興味をそそられる。彼はこの曲を一体どう振るのだろうか? その場面を見るだけでも行く価値がありそうだ。
「第九」もむろん楽しみ。2010年から東京フィルの常任指揮者を務めるエッティンガーは、これまで同楽団からドイツ風の分厚い響きを引き出し、重層的かつ引き締まった演奏を聴かせてきた。それに彼は、バレンボイムの薫陶を受け、現在マンハイム国民劇場の音楽総監督を務めるほか、ウィーン国立歌劇場はじめ各地の一流歌劇場に客演してしている。すなわち、ドラマティックなドイツ音楽の極致たる「第九」は、本領が最も発揮される演目といえる。同楽団との「第九」は、白熱の名演が大反響を呼んだ(ライヴCDもリリース)2010年以来4年ぶり。今回も一線級のソリスト揃いだし、同曲で重要な合唱を日本随一の東京オペラシンガーズが受け持つのも心強い。そして当コンビが今年8月の『フェスタサマーミューザ』で聴かせた、まさしく重層的でドラマティックなマーラーの交響曲第5番からも、前回を上回る巨匠的熱演への期待が膨らむ。
「第九」もまた初演190年という記念(?)の年。日独の記念すべき音楽で、歓喜のクリスマス&年末を迎えよう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)
12/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/21(日)19:00 サントリーホール
12/23(火・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp