ピアニスト・三浦謙司が神戸市室内管弦楽団の記者懇談会に登場!

来年3月、第161回定期演奏会「ラヴェルに乾杯!」で初共演

Kenji Miura

 神戸市室内管弦楽団第161回定期演奏会の記者懇談会が10月2日、神戸市内で行われ、同公演が初共演となるピアニストの三浦謙司が出席した。

 神戸市室内管は、2023-24シーズンの定期演奏会において、音楽監督の鈴木秀美をはじめ、鈴木優人、作曲家の故・一柳慧など地元ゆかりの音楽家や作品を多数取り上げている。
 来年3月9日に行われる第161回定期は「ラヴェルに乾杯!」と題し、9月にアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督に就任したばかりで、同公演で初来日するピエール・ブリューズを指揮に、神戸市出身の三浦謙司をラヴェルのピアノ協奏曲のソリストに迎える。三浦は、ルー・ハリソン作曲の「様々な三重奏曲」も演奏するという。
 記者懇談会では、ラヴェルの協奏曲のほか、自身の音楽観について話を聞いた。

 三浦は小学4年生まで神戸で過ごした。
「人生の3分の2以上は海外で生活していますが、それでも神戸に帰ってくると懐かしく、いつも嬉しく思います」

 ラヴェルの協奏曲には特別な思いを抱く。
「弾くたびに新しい発見があり、自分が考える協奏曲の理想形に非常に近い作品。オーケストラにもソロがたくさんあって、室内楽のようなやりとりができる。
 ソリストがやりたいことをやるだけのエゴイスティックな演奏は好きではないので、指揮者、オーケストラ、それぞれの意思を汲み取って、その時にしかできないことにオープンなマインドで臨みたい。すごく楽しみ」

 ベルリン芸術大学に在学中の2012年、ピアノから離れることを決意し退学、帰国をした三浦。その際も拠点は神戸だったという。
「世の中には素晴らしい音楽家がたくさんいて、素晴らしい録音もあるのに、なぜ自分が演奏するのか。自分が音楽をやらなくても世界はまわっていく。仕事として成り立つかもわからないのにやる必要があるのか。音楽に向き合うにあたって、好きな気持ちだけでは軽いと思っていました。
 そして、作曲家が人生を絞ってのこした作品に対峙するには、人生経験が圧倒的に足りない。このままではいけないと思い、周囲に反対されましたが、退学、帰国し、神戸を拠点に工場などで働きました」

 2014年に再びベルリンにわたり、ハンス・アイスラー音楽大学へ。19年ロン・ティボー・クレスパン国際コンクールで優勝を果たした。
「コンクールは嫌いだけど、コンクールを通らずに世に出るのはすごく難しい。多くのコンクールから、自分が求める姿とは違うスター誕生の期待を感じていましたが、ロン・ティボーは、チラシや課題曲から伝わる音楽家の理想像が自分の考えと似ているなと思いました」

 国際コンクールに優勝しても、慢心することはない。
「コンクールをとった後、すごく虚しさを感じました。周りからは『これで人生オッケーだね』みたいに言われても『何が?』と。優勝した後、自分の演奏が特に変わったわけでもなく、自分が偉くなったわけでもなく、幸せになったわけでもなく、何にも変化がなくて。コンクールってこんなものだったのかと。すごくショックでした。しかし逆にそれが、今歩み続ける理由にもなっています」

 三浦はすでにラヴェルの協奏曲を経験しているが、神戸市室内管との共演にむけて、あえて特別なイメージは持っていないという。
「偏見を持ってリハーサルに入ると危ないと思っています。他人に何かを求めたり、できるだけ先入観を持たずに臨みたいです」

 神戸は特に海が印象的だという三浦。歩みを止めない彼は、故郷でどんな音楽を奏でるのだろうか。

【Information】
神戸市室内管弦楽団 第161回定期演奏会「ラヴェルに乾杯!」
2024.3/9(土)15:00 神戸文化ホール

出演/
指揮:ピエール・ブリューズ
ピアノ:三浦謙司*
管弦楽:神戸市室内管弦楽団

プログラム/
ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」
ルー・ハリソン:様々な三重奏曲*
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調*
アイヴズ:交響曲第3番「キャンプの集い」<アイヴズ生誕150年>

2023.11/17(金)発売
問:神戸市民文化振興財団078-361-7241
https://www.kobe-bunka.jp/hall/