【CD】J.S.バッハ:トッカータ 全7曲/近藤伸子

 現代ものとともにバッハを得意とする近藤伸子。最近では「フーガの技法」、「音楽の捧げ物」とバッハ最晩年の作品を立て続けに録音している。「7つのトッカータ」はバッハの若い頃に作曲されたと考えられている作品であるが、即興性の強い序奏部や間奏部とフーガの交替は時に冗長になりがちで、晩年の厳格な作品とは違う意味で難しい。近藤の演奏は何気ないモティーフの繰り返しも注意深く処理する一方、フーガの主題の提示は冷静でさりげないが、音楽の構造は常に透徹しており、集中力が途切れることがない。どの作品にも高い完成度が感じられるのは演奏の勝利であろう。待望の再発売盤。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2023年10月号より)

【information】
CD『J.S.バッハ:トッカータ 全7曲/近藤伸子』

J.S.バッハ:トッカータ BWV910〜BWV916

近藤伸子(ピアノ)

ナミ・レコード
WWCC-7987 ¥2750(税込)