創立60周年を記念した定期演奏会を開催!
1963年に設立され、「東吹(とうすい)」の愛称で親しまれてきた東京吹奏楽団が、11月5日に東京芸術劇場で創立60周年記念 第70回定期演奏会を開催する。この記念すべきコンサートでタクトを振るのは、東京音楽大学で東吹の名誉指揮者・汐澤安彦氏に師事し、現在は国内外で活躍する松井慶太さんだ。
今回、この注目すべき公演について、松井さんと東吹のコンサートマスターでクラリネット奏者の粟生田直樹(あおうだ なおき)さんに話を聞く機会を得た。
粟生田 東京吹奏楽団は60年という長い歴史と伝統を持つ楽団です。いまは団員の世代交代が進んでいて、若い気鋭のプレイヤーたちと新しいサウンドをつくり上げているところ。そんなときに松井さんとご一緒できるのはとても嬉しいです。これまで5回ほど共演させていただきましたが、明確なビジョンと熱いエネルギーを持ったマエストロだと感じました。今回もいまからワクワクしています。
一方、松井さんは、恩師・汐澤安彦氏が名誉指揮者を務める東京吹奏楽団を振ることへの強い思い入れを語ってくれた。
松井 大学時代から汐澤先生が東吹を振るのを見て、ずっと憧れていました。実際に自分が指揮台に立ってみると、東吹は「ザ・吹奏楽の音、老舗の音がする」楽団だと感じました。もちろん、汐澤先生の存在を考えるとプレッシャーも感じますが(笑)、若いプレイヤーが増えつつある東吹のみなさんとともに、伝統の音を継承しつつ、新時代の東吹サウンドをつくっていければと思っています。
吹奏楽の名曲を集めた豪華なプログラム
本公演のプログラムには、吹奏楽ファンに大人気のフィリップ・スパークとオットリーノ・レスピーギという2人の作曲家の作品が並んでいる。なんといっても注目は、「創立60周年記念委嘱作品」である。まだタイトルも発表されていないが、「宇宙の音楽」「ドラゴンの年」などダイナミックな曲想や胸を打つメロディが持ち味のスパークだけに、新たな名曲が誕生するのではないかと期待が高まる。
また、「ファンファーレ・フォー・トウキョウ」は東吹の50周年記念委嘱作品であり、明治中期の日本の「推量節」をモチーフにした「リフレクションズ~ある古い日本俗謡による~」も東吹の委嘱作品だ。そして、吹奏楽コンクールの自由曲としても人気の「祝典のための音楽」もプログラムに用意されている。
松井 スパークは色彩感が豊かな曲づくりが特徴で、オーケストレーションを知り尽くした作曲家だと思っています。スパークの曲を通じて東吹の素晴らしさが発揮されるでしょう。
スパークはイギリス人で、現在71歳。同時代の作曲家だが、一方、イタリア人のレスピーギは19世紀から20世紀を生きたクラシックではおなじみの作曲家である。今回の公演では哀愁を漂わせるメロディが有名な「リュートのための古い舞曲とアリア」 第3組曲より〈シチリアーナ〉、バレエ音楽「シバの女王ベルキス」の2曲が演奏される。
松井 聴いていると風景が目に浮かび、匂いまでも感じられるレスピーギならではの「音の魔術」を味わっていただけたらと思います。レスピーギはローマ三部作などが吹奏楽で頻繁に演奏されており、「ベルキス」も人気の曲。しかし、コンクール用のカットバージョンしかご存知ない方も多いのでは。ぜひ東吹の演奏で全曲を聴いてほしいですね。
松井さんの言葉に続けて、粟生田さんもこう語った。
粟生田 クラシック曲のアレンジ作品では、弦楽器のパートをクラリネットなど管楽器が演奏します。弦楽器と違って息継ぎが必要なのが難しいのですが、それによって吹奏楽ならではのフレーズ、音楽の表現が生まれるのが面白いところ。ぜひレスピーギの作品ではそのあたりに注目してください。
吹奏楽部員からクラシック音楽ファンまで幅広く集う演奏会に
吹奏楽というと、コンクールや野球応援など学生の部活動のイメージがあるかもしれないが、プロの吹奏楽団にはアマチュアとは一線を画すテクニックと芸術性がある。
その点は、多数のオーケストラと共演する松井さんも認めるところだ。
松井 世界的に見ても、日本の吹奏楽はハイレベル。その最高峰であるプロの吹奏楽団の演奏は、普段はオーケストラを聴いているクラシックファンでも心をつかまれるものがあると思います。東京芸術劇場というホールが持つ響きを最大限に活用した、東京吹奏楽団の演奏をぜひ生で体験してほしいですね。
キラキラ輝く金管楽器や渋い黒色の木管楽器、多彩な打楽器、低音を支えるコントラバス……。そんな楽器編成から放たれる音は、聴覚のみならず全身で体感することで大きな音楽の喜びに変わる。60年間愛され続けてきた東京吹奏楽団。そのサウンドを浴び、吹奏楽の愉悦を味わっていただきたい。
取材・文:オザワ部長(吹奏楽作家)
写真:編集部
【Information】
東京吹奏楽団 創立60周年記念 第70回定期演奏会
2023.11/5(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
指揮:松井慶太
スパーク:
ファンファーレ・フォー・トウキョウ
創立60周年記念委嘱作品
リフレクションズ
祝典のための音楽
レスピーギ(森田一浩編):「リュートのための古い舞曲とアリア」第3組曲より〈シチリアーナ〉
レスピーギ(木村吉宏編):バレエ音楽「シバの女王ベルキス」
問:東京吹奏楽団 03-5937-5205
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