東京オペラシティ B→C 黒川 侑(ヴァイオリン)

バッハと現代が互いに共鳴する一夜

(c)Ikuo Hiramatsu

 京都とパリを拠点に、ソロ、室内楽と多彩な活動をくり広げるヴァイオリニストの黒川侑が、バッハとコンテンポラリーを軸にプログラミングする東京オペラシティの「B→C」シリーズへ意欲的な選曲を引っ提げて登場する。

 「バッハは基礎の骨」にある音楽と独特の表現で語る黒川。前半は葵トリオをはじめ、大活躍中の秋元孝介をピアノに招き、バッハのハ短調のソナタ BWV1017にサーリアホとクセナキスをつなげた。聴きものはクセナキスの「ディクタス」。各声部がランダムな動きをしながらぶつかり合い、破壊的なパワーを発揮する。この超絶的な難曲を巧者たちがどう料理するか。

 後半は無伴奏。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番の後に、シチェドリンがバッハ生誕300年を記念して作曲した「エコー・ソナタ」を続ける。現代音楽が途中でバッハの音楽へと変容し、全く異なる2つの時代がタイムスリップしたかのように結びつく。バロック/現代、デュオ/ソロというコントラストのもと、縦横無尽に展開される妙技を楽しみたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年9月号より)

2023.9/12(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp