吹奏楽は私の原点なのです
日本でもすでに複数のオーケストラに客演しているシズオ・Z・クワハラが、東京佼成ウインドオーケストラの定期演奏会に登場する。米国籍だが、両親は日本人で、彼も10歳まで日本で育った。「Z」はミドルネームの略ではなくニックネーム。
「アメリカ人は“シズオ”と発音できないんですよ。結局SHIZUOの“Z”だけ残って、『ズィー』と呼ばれていました。じゃあそれで親しんでもらおうと」
吹奏楽でも有名な名門イーストマン音楽学校で学んだ。
「音楽教育科に入学したあと、高校まで遊びで吹いていたサックスも始めたのですが、そこで初めて指揮者というものを見て感銘を受け、サックスよりも指揮の勉強に専念しました。自分で学生のオーケストラを組織して、初めて振った曲がマーラーの5番(笑)。そこから始めるともう怖いものはないですよね」
現在ジョージア州オーガスタ交響楽団音楽監督を務めているが、吹奏楽は彼の原点でもあるだろう。
「やはり自分でも吹いていたので楽しいですね。しかも今回はアメリカ・プログラム。いろいろと経験してわかっているジャンルなのでなおさらです」
プログラムは、ロン・ネルソン、ロバート・ラッセル・ベネット、デイヴィッド・ホルジンガーといったアメリカの吹奏楽オリジナル曲に、ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」、ヒンデミット「ウェーバーの主題による交響的変容」。
「私が提案したのがベネットとホルジンガーです。ベネットの『古いアメリカ舞曲による組曲』は、佼成の桂冠指揮者で、今年生誕100年のフレデリック・フェネルさんとご一緒した時に演奏した曲。ビッグバンドのスタイルを吹奏楽でどう求めるか、作曲当時としてはすごく画期的なスタイルなんですね。ホルジンガーは私が高校生の時に出会った作品。とても感動的で、この曲がきっかけで音楽にのめり込んだという吹奏楽ファンもたくさんいると思います。ヒンデミットは一見“アメリカ”からは外れそうですが、エール大学で教授をしていたし、『交響的変容』はニューヨーク・フィル初演ですから。『ラプソディ・イン・ブルー』の吹奏楽版は初めてですが、もともとオリジナルはビッグバンド用の曲なので楽しみですね」
彼のウェブサイト(shizuokuwahara.com)の動画でオーケストラのリハーサル風景を見た。簡潔で的を射た表現の指示もさることながら、それを受け、演奏で応える楽員たちとの間の信頼関係が見えるような映像。いい指揮者だ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
第121回 東京佼成ウインドオーケストラ定期演奏会
11/22(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京佼成ウインドオーケストラ チケットサービス0120-692-556
http://www.tkwo.jp