高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

リゲティ×バルトーク——エキゾティックな響きに魅せられた作曲家たち

 今年生誕100年を迎えたリゲティはユダヤ系ハンガリー人で、第二次大戦ではナチによって一家離散にあい、戦後は共産圏の作曲家に押し付けられた社会主義リアリズムを嫌いひっそりと活動していた。市民デモをソ連軍が鎮圧したハンガリー動乱がきっかけで西側に移住すると、独創性が花開き20世紀の最重要作曲家の一人とみなされるようになる。

 今回の高関健&東京シティ・フィルのプログラミングは、そのルーツにも光を当てている。冒頭に置かれた「ルーマニア協奏曲」はリゲティがまだハンガリーで活動していた1951年の作品で、隣国ルーマニア音楽の研究成果を応用、エキゾティックなメロディーと語法で編まれている。

 この作品はプログラム後半に置かれたバルトーク「管弦楽のための協奏曲」と響きあうだろう。バルトークもまた東欧の民俗音楽の研究に打ち込んだが、第二次大戦の戦火の広がりを前にアメリカに移住。そこで病を押しながら書かれたのが本作だ。それぞれのパートに聴きどころがあるダイナミックな音楽だが、それだけにオケの実力も問われる。

 この2曲の間には、リゲティのヴァイオリン協奏曲が挟まれる。複雑な変拍子や特殊調弦が続出、独創的なアイディア満載の超難曲だ。「アリア、ホケトゥス、コラール」と題された第2楽章では、どこか民謡を想起させる素朴で調子はずれのメロディーも現れる。同楽団特別客演コンサートマスターでもある荒井英治が、高関の誠実で緻密なアプローチに乗って、迫力のある独奏を聴かせてくれるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年8月号より)

第363回 定期演奏会
2023.9/1(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp