次世代ホープのフレッシュな感性を感じる
新日本フィルハーモニー交響楽団は、指揮者の大友直人と組み、若い才能を発掘&紹介、名曲とともに楽しむ“新しい風”と題したコンサートを10月7日、すみだトリフォニーホールで開催する。大友は東京文化会館音楽監督時代に東京音楽コンクールの体制を刷新、若手の後押しを熱心に進めてきた。今回のソリストは2006年に富山県入善町で生まれ、現在は慶應義塾高校3年に在学中の中瀬智哉。今年が生誕150年&没後80年の作曲家ラフマニノフの代表作、ピアノ協奏曲第2番を弾く。2019年の第73回全日本学生音楽コンクール全国大会ピアノ部門中学校の部で第1位を受賞して頭角を現し、すでに東京の大手音楽事務所(ヒラサ・オフィス)に所属している。
中瀬は23年1月の山田和樹指揮読響北陸公演にもラフマニノフ第2番のソリストとして同行、21日の富山のオーバード・ホールで“故郷に錦”を飾った後、22日のハーモニーホールふくいでは前日を上回る熱演で聴衆を魅了した。この時点でまだ、プロのオーケストラとの協奏曲演奏の経験は5回に満たなかった。華奢な体格ながら打鍵は合理的、低音の厚みも高音の輝きも申し分なく、大編成のオーケストラに負けない音量を備える一方で、しなやかな弾力性を伴ったフレージングには若竹そのもののフレッシュさがある。その9ヵ月後に当たる10月の大友との共演では、さらなる進化をみせるだろう。
コンサートの後半も名曲中の名曲、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。60代半ばに達した名指揮者の熟した解釈に期待しよう。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2023年7月号より)
2023.10/7(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp