進境著しいオーケストラと若手の邂逅がもたらす熱きハーモニー
静岡県を拠点としてきた静岡交響楽団と浜松フィルハーモニー管弦楽団が合体し、「富士山静岡交響楽団」として新たなスタートを切ったのは2021年4月。地元に根差しながら高水準の演奏で充実した活動を展開し、3年目のシーズンに入った。今年度6回の定期演奏会に登壇する指揮者は4人。首席指揮者の高関健(3回)、ドイツの歌劇場のシェフを務めてきたキンボー・イシイ、各地で名演を繰り広げる名匠ユベール・スダーン。そしてこの実績ある3人に加わるのが、7月出演の太田弦である。1994年生まれ、2015年東京国際音楽コンクール〈指揮〉第2位・聴衆賞受賞、各地に客演を重ねながら大阪響、仙台フィルのポストを務め、24年4月からは九響首席指揮者に就任。20代にしてすでに楽壇の期待が集まる俊英で、この数年の代役出演でも好演を重ね、聴衆の評価も高めてきた。
その太田が静響定期で聴かせるのは、ロシア、スラヴのプログラム。有名な「ワルツ」をはじめ、濃密な情感を味わえるハチャトゥリアン「仮面舞踏会」で開始。メイン曲はドヴォルザーク交響曲第7番。チェコの情緒とエネルギーが堅固な形式で構築された、重厚な名作である。太田がその歌心と情熱をどう聴かせるのか、期待が高まる。
チェロの鳥羽咲音を迎えたショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番も期待が大きい。ウィーン生まれ、18歳の逸材で、ベルリン芸術大学に学び、すでに名指揮者たちと共演を重ねる。その音色を傑作で体験できるのは嬉しい。将来を担う若き音楽家たちの共演が、静岡と浜松で実現する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年6月号より)
第120回定期演奏会
2023.7/15(土)14:00 静岡市清水文化会館 マリナート
7/16(日)14:00 アクトシティ浜松(中)
問:富士山静岡交響楽団054-203-6578
https://www.shizukyo.or.jp