最高の環境で豪華なチャイコフスキーを満喫
かつしかシンフォニーヒルズのN響公演には、何より重要なポイントがある。それは会場が1318席であること。すなわち、日本を代表する名楽団の高い機能性と重層的なサウンドを、通常よりリアルな音響で堪能できる。これは貴重かつ贅沢な体験と言うほかない。
7月の公演には、“帝王”カラヤンの晩年にアシスタントを務めていた指揮者・山下一史と、2019年チャイコフスキー国際コンクール第4位入賞以来、世界から注目を集めるヴァイオリニスト・金川真弓が出演。チャイコフスキーが同時期に書いた名作を聴かせる。
山下は、各地のオーケストラの様々なポストを歴任し、16年から千葉交響楽団の音楽監督、22年から愛知室内オーケストラの音楽監督と大阪交響楽団の常任指揮者を務めるなど、引く手数多のマエストロ。今回の交響曲第4番は、チャイコフスキーの管弦楽作品の中でもとりわけ情熱的でダイナミックな音楽だけに、熱く壮麗な山下のタクトと豪華なN響サウンド(とホールの音響)が相まった、迫力満点、血湧き肉躍る快演が展開されるに違いない。
金川は、ベルリンに拠点を置きながら日本でも旺盛な活動を続け、協奏曲ではN響はじめ全国のオーケストラを網羅するほど出演を重ねている。知性と情熱を併せ持った“奇を衒わずして雄弁”な演奏は信頼度抜群。そして今回のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、意外にも東京では初の演奏となる。飛躍のきっかけとなったコンクールゆかりの曲を、N響と共に奏でるとなれば、いやが上にも期待は膨らむ。本公演は、魅惑のポイントが並ぶ、見逃せないコンサートだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年6月号より)
2023.7/1(土)16:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
問:かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233
https://www.k-mil.gr.jp