最晩年の傑作群を親密なデュオによる連弾で
作品と深く向き合い、その美質を洗練されたピアニズムで届ける寺田悦子と渡邉規久雄。それぞれが国際的な活動も目覚ましいピアニストでありながら、近年はデュオにも積極的に取り組み、高い評価を得ている。
常に“いま、これを聴いてほしい”という想いからじっくりと選曲を行っている二人が今回披露するのは、オール・シューベルト・プログラム。シューベルトが亡くなる1828年に書いた幻想曲 ヘ短調にアレグロ「人生の嵐」、さらに弦楽五重奏曲(フーゴ・ウルリッヒによるピアノ連弾版)などが演奏される。文字通り命がけで作曲された作品は、美しい旋律や和声はもちろん、多彩な転調、晩年に積極的に取り入れられた対位法、そしてドラマ性に満ちたものである。互いにシューベルト作品の演奏を得意とする寺田と渡邉による今回のプログラムは、楽曲自体の魅力はもちろん、すべての旋律や和声に込められた作曲者の想いまでも誠実に届けてくれるだろう。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2023年6月号より)
2023.6/25(日)14:00 東京文化会館(小)
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp
他公演
2023.5/26(金)大阪/ザ・フェニックスホール(06-6363-7999)