響ホール開館30周年記念 ガラ・コンサート&まるっとEnjoy! 響ホールで夏休み

豪華アーティストが奏でる極上のアンサンブル

 北九州市立響ホールが今年開館30周年を迎える。同ホールは1993年に開館して以来、すぐれた音響効果を持つ音楽専用ホールとして演奏家たちと聴衆から高く評価されている。720名収容のシューボックス型ホールはとりわけ室内楽に適したホールとして名高く、トップレベルの演奏家たちが数々の名演をここでくりひろげてきた。

 開館30周年とあって、2023年度は非常に力の入った主催公演のラインナップが用意されている。なかでも注目されるのは、7月30日の「響ホール開館30周年記念 ガラ・コンサート」。節目の年を祝うべく、日本を代表する名手たちが一堂に会する。N響特別コンサートマスターの篠崎史紀を筆頭に、ヴァイオリンには2005年ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位の南紫音、ミュンヘン・フィル・コンサートマスターの青木尚佳、東響コンサートマスターの小林壱成、神奈川フィル・コンサートマスターの大江馨、都響第2ヴァイオリン首席奏者の双紙正哉ら、そうそうたる名前が並ぶ。また、ヴィオラにはN響首席奏者の佐々木亮、バイエルン放送響・契約首席奏者の湯浅江美子、チェロには日本センチュリー響首席奏者の北口大輔、都響首席奏者の伊東裕、コントラバスには読響首席奏者の大槻健らが参加。ふだんは耳にすることのできない精鋭ぞろいのアンサンブルが実現することになった。

 弦楽器中心のアンサンブルだが、管楽器奏者も3名が参加する。クラリネットにトリノ国際音楽コンクール第2位の田中香織、ファゴットに都響首席奏者の長哲也、ホルンに新日本フィル首席奏者の日髙剛と、こちらも豪華な陣容だ。

左上より 篠崎史紀 ©井村重人/双紙正哉/青木尚佳 ©井村重人/南紫音 ©Shuichi Tsunoda
岩倉万希子/大江馨 ©井村重人/小林壱成 ©Shigeto Imura
左上より 倉冨亮太/後藤康/矢部咲紀子/佐々木亮 ©️Taisuke Yoshida
三国レイチェル由依/湯浅江美子/和田志織
左上より 北口大輔/伊東裕/小畠幸法/大槻健
田中香織 ©︎Kosuke Atsumi/長哲也 ©️Ayane_Shindo/日髙剛

アニバーサリーを祝う盛りだくさんなプログラム

 プログラムはモーツァルトのディヴェルティメント ニ長調 K.136、ドヴォルジャークの弦楽セレナーデ、シューベルトの八重奏曲、そしてチャイコフスキーの弦楽セレナーデ。ずいぶん盛りだくさんのプログラムだが、休憩を2回入れる3部構成で、約3時間にわたってたっぷりと楽しめる。

 第1部で演奏されるモーツァルトのディヴェルティメントはだれもがどこかで耳にしている名曲だろう。作曲時モーツァルトは16歳。若き日のみずみずしい感性が息づく。ドヴォルジャークの弦楽セレナーデも親しみやすいメロディにあふれている。民族色の豊かさも大きな魅力だ。

 第2部で演奏されるシューベルトの八重奏曲は管楽器を含んだ独特の楽器編成が特徴。クラリネット、ファゴット、ホルン、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという珍しい編成で書かれている。全6楽章による構成はセレナーデやディヴェルティメント的。室内楽の醍醐味である奏者間の音の対話を存分に楽しめる。その一方で、曲想は壮大でシンフォニックであり、最小限の管楽器と弦楽器による縮小編成版の交響曲のような性格も感じられるのが、この曲のおもしろいところ。

 第3部で演奏されるチャイコフスキーの弦楽セレナーデは、この分野の最高傑作だろう。チャイコフスキーはモーツァルトを深く敬愛していたことから、セレナーデという古典的なフォーマットで曲を書いた。しかしそこに満たされたメロディはチャイコフスキーならではの流麗さやメランコリーにあふれている。そしてこの曲を前述の日本を代表する名手たちが演奏するとなれば、はたしてどんな音が鳴り響くことか。おそらく第1楽章の最初のワンフレーズからすさまじいインパクトがあるのでは……と期待したくなる。

家族で楽しめる充実の関連イベントも開催

 また、今回のガラ・コンサートの前日には、響ホール30周年記念スペシャル版「まるっとEnjoy! 響ホールで夏休み」が開催される。こちらは篠崎史紀のヴァイオリンと響ホール開館30周年記念合奏団が出演。3歳以上から入場可能で、ファミリーでも気軽に楽しむことができる。事前申込制(抽選)で入場は無料。第1部の「いろいろな楽器の音色を聴いてみよう!」では、シューベルトの八重奏曲の抜粋を通して、それぞれの楽器の特徴が紹介される。第2部「まろさんと共演!&弦楽合奏を聴いてみよう!」では、事前にオーディションで選ばれた子どもが篠崎とバッハを共演するほか、弦楽合奏によりモーツァルト、ドヴォルジャーク、チャイコフスキーの作品が抜粋で演奏される。休憩中にはステージ上でピアノやハープ、チェンバロを間近で見たり、ホワイエで弦楽器の体験コーナーが設けられるなど、さまざまな趣向が凝らされている。

 幼いうちから本物の音楽に触れさせたいと願う親御さんにとっては絶好の機会だ。子ども時代に響ホールに足を運んだことが、きっと特別な体験として記憶に刻まれるにちがいない。

文:飯尾洋一

響ホール開館30周年記念 ガラ・コンサート
2023.7/30(日)14:00 北九州市立響ホール
●曲目
モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ドヴォルジャーク:弦楽セレナーデ ホ長調 op.22
シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 op.166,D803
チャイコフスキー:弦楽セレナーデ ハ長調 op.48

●料金
全席指定
S席 : 5,000円(前売)
A席 : 3,500円(前売)
25歳以下(A席):2,000円(前売/入場時要証明)
*未就学児入場不可
*当日各500円増

2023北九州国際音楽祭 響ホール30周年記念スペシャル版
まるっとEnjoy! 響ホールで夏休み

2023.7/29(土)14:00 北九州市立響ホール
●プログラム
第1部 いろいろな楽器の音色を聴いてみよう!
第2部 まろさんと共演!&弦楽合奏を聴いてみよう!

●料金
入場無料(事前申込制〈抽選〉6/20締切
問:北九州国際音楽祭事務局093-663-6567