清澄な歌声で愉しむ18世紀の大ヒット・オペラアリア
新日本フィルの第15回「すみだクラシックへの扉」のテーマは「美しきバロックオペラの世界」。日本を代表するカウンターテナーとして八面六臂の活躍をくりひろげる藤木大地が、ヘンデル、グルック、モーツァルトの名曲を歌う。ヘンデルのメロディメーカーとしての才が発揮された歌劇《セルセ》の〈オンブラ・マイ・フ〉、《リナルド》の〈涙の流れるままに〉や、グルックの歌劇《オルフェオとエウリディーチェ》の〈エウリディーチェを失って〉、モーツァルトの歌劇《フィガロの結婚》の〈恋とはどんなものかしら〉など、名曲中の名曲がずらりと並び、さながら18世紀ベストヒット集といった趣だ。藤木の透明感のある声をたっぷりと味わうことができるだろう。
指揮はカナダ生まれの実力者、デリック・イノウエ。ニューヨークのメトロポリタン・オペラをはじめ、世界各地の歌劇場で指揮を務めたほか、新日本フィルをはじめ日本のオーケストラとの共演も多い。セイジ・オザワ松本フェスティバルにも招かれ、《ジャンニ・スキッキ》他を指揮している。今回はメンデルスゾーンの劇音楽「夏の夜の夢」序曲 、モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」、パッヘルベルの「カノン」といったオーケストラ曲も合わせて演奏される。
カウンターテナーの澄んだ歌とオーケストラの潤い豊かなサウンドが、バロック音楽とウィーン古典派の優美な世界へ誘う。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年5月号より)
すみだクラシックへの扉 第15回
2023.6/9(金)、6/10(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp