声楽曲のソリストを中心にキャリアを積み重ねてきたソプラノ・隠岐彩夏のデビュー盤。学生時代にシューマン歌曲を研究し、実生活では2児の母親でもある彼女に歌われることで説得力と心からの共感を生む「女の愛と生涯」を筆頭に、バーバーの〈ノックスヴィル 1915年の夏〉など、一枚の中に人生のあらゆる場面が散りばめられているかのよう。R.シュトラウスの〈明日!〉は言うまでもなく、歌姫ネリー・メルバのために書かれた本盤タイトル曲などで矢部達哉のヴァイオリンが冴え、全編で横山幸雄のピアノによる好サポートが光る(彼とのコラボによる書き下ろし曲も収録)。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2023年4月号より)
【information】
CD『愛しの夜/隠岐彩夏』
シューマン:女の愛と生涯/バシュレ(松岡あさひ編):愛しの夜/バーバー:ノックスヴィル 1915年の夏/R.シュトラウス(松岡編):「4つの歌曲」より〈明日!〉/横山幸雄:静かな夜に 他
隠岐彩夏(ソプラノ)
横山幸雄(ピアノ)
矢部達哉(ヴァイオリン)
キングレコード
KICC-1604 ¥3300(税込)