【CD】Perpetuum ~無窮動/アンソニー・ロマニウク

 同一音型の反復は生理的に心地よい。そのことを作曲家は古今の別なくよく知っていて、創作に生かしてきた。ロマニウクは本作で、バロックから現代まであらゆる時代からこの反復に主眼を置いた彼自身の即興演奏も含む21作品を選び、ヴァージナルからシンセサイザーまで6つの楽器で弾き分けている。しかもバッハに電子ピアノなど、楽器のチョイスも時代に合わせるのではなく、ロマニウクのインスピレーションが優先される。固定概念を捨て、素材にしなやかに迫っていくその指先は感覚を刺激し、生理に語りかける。そこにあらゆる情報が並置される現代という時代相が鮮やかに浮かんでくる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年3月号より)

【information】
CD『Perpetuum ~無窮動/アンソニー・ロマニウク』

J.S.バッハ(ロマニウク編):「リュート組曲」より〈前奏曲 ホ長調〉/ペンギン・カフェ・オーケストラ/サイモン・ジェフス(ロマニウク編):パーペテュム・モービル/Parabola 放物線(ロマニウクによる即興)/カプスベルガー(ロマニウク編):トッカータ・アルペッジアータ 他

アンソニー・ロマニウク(ピアノ/チェンバロ 他)

ALPHA/ナクソス・ジャパン
NYCX-10374 ¥3300(税込)