【CD】J.S.バッハ:クラヴィコード/アンドラーシュ・シフ

 近年、時代楽器への関心を高めているシフが、クラヴィコードでJ.S.バッハの鍵盤作品を録音した。使用楽器は1743年製Ph.-J.スペッケンのクラヴィコードのレプリカ。リュートのように親密で繊細な音色を持ちながら、歯切れよいタッチで扱えば打楽器的な響きも生む。この楽器でシフは、カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」という親しき者との別離を描いた作品で開始し、「インヴェンション」と「シンフォニア」の音楽的な魅力を遺憾なく伝える。「半音階的幻想曲とフーガ」はギター音楽のような哀愁も帯びた「幻想曲」と、どこか神秘的な緊張感をもつ「フーガ」を聴かせる。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2023年3月号より)

【information】
CD『J.S.バッハ:クラヴィコード/アンドラーシュ・シフ』

J.S.バッハ:カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」 BWV992、インヴェンション BWV772〜786、4つのデュエット BWV802〜805、「音楽の捧げもの」 BWV1079より〈3声のリチェルカーレ〉、シンフォニア BWV787〜801、半音階的幻想曲とフーガ BWV903

アンドラーシュ・シフ(クラヴィコード)

ユニバーサル クラシックス/ECM Records
UCCE-2100/1(2枚組) ¥5280(税込)