クァルテットとともに味わう孤独の旅路
シューベルトの代表作のひとつ、歌曲集「冬の旅」。絶望した人間の内面を掘り下げていく内容はロマン主義の時代から現代にまで通じるもの。それを繊細なメロディとハーモニーで表現し尽くしたシューベルトの音楽は後世に刺激を与え続け、様々な編曲も行われてきた。2月の「クレアシオン23演奏会」では本作が取り上げられ、弦楽四重奏のための編曲が体験できる。
歌はテノールの大島博。ドイツでE.ヘフリガーやD.フィッシャー=ディースカウに師事。その美声とともに、ドイツ・リートの深い解釈には定評があり、「冬の旅」は自身が編集・校訂した楽譜も出版されている。共演は古典四重奏団で、チェロの田崎瑞博が編曲を担当した。田崎はこれまでも様々な編曲に携わってきており、今回の編曲もスタンダードになり得るものと期待できるし、4人の鮮烈な表現も大いに注目したい。公演前には大島と田崎によるプレトークもあり、新しい響きによる「冬の旅」の世界に深く浸れる一夜となる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年2月号より)
2023.2/10(金)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:クレアシオン03-3948-5383
https://www.cre-a-tion.com