バッハを中心に40枚近くのCDを出している武久源造。この「イギリス組曲」にも、長年の蓄積とこだわりが満載。前半3曲をルッカース・モデルのチェンバロで、後半をバッハ時代のジルバーマン・モデルのフォルテピアノで演奏する。バッハが導入を書き込んだ曲以外の4曲で、武久が即興的な序奏を作曲して加える。大胆な試みだ。第1番では2つのクーラントの変奏に味があり、特にドゥーブルⅡは繊細で美しく、バッハの内面に分け入るかのよう。ブーレⅡの異様な音色変化にも驚かされる。第2番ジーグは対位法的展開に拡がりがあり、生命力に満ち満ちている。第5番アルマンドの内省的な歌や声部の絡みが美しい。
文:横原千史
(ぶらあぼ2023年2月号より)
【information】
CD『バッハの錬金術 Vol.3 イギリス組曲(全曲) BWV806-811/武久源造』
J.S.バッハ:イギリス組曲第1番〜第6番
武久源造(チェンバロ&フォルテピアノ)
コジマ録音
ALCD-1214,1215(2枚組) ¥3740(税込)