新日本フィル 佐渡裕(ミュージック・アドヴァイザー)× 宮内義彦(楽団理事長)新シーズンの展望を語る

 新日本フィルハーモニー交響楽団が11月21日、2023/24シーズンの定期演奏会プログラムについての記者発表会を墨田区内で行なった。ミュージック・アドヴァイザーで2023年4月に第5代音楽監督に就任する佐渡裕と、同楽団理事長でプロ野球オリックス・バファローズのオーナーでもある宮内義彦が登壇し、新シーズンの魅力やオーケストラの将来について語った。

宮内義彦
佐渡裕

 佐渡は、新日本フィルが創立50周年を迎えた2022年4月にミュージック・アドヴァイザーに就任。50周年記念ツアーを成功させ、楽団の拠点・すみだトリフォニーホールのある墨田区の「すみだ音楽大使」に任命されるなど、来年の音楽監督就任に向けてすでに様々な活動をスタートさせている。

 2023/24シーズンの定期演奏会は、〈トリフォニー・シリーズ〉〈サントリーホール・シリーズ〉〈すみだクラシックへの扉〉の3本柱。佐渡が大切にしているという新シーズンのテーマは「ウィーン・ライン」。「選び抜かれたクラシックの名曲たち」と語るラインナップで、R.シュトラウス「アルプス交響曲」、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」、マーラーの交響曲第4番などを振る。
 客演では、シャルル・デュトワが再登場するほか、秋山和慶や沼尻竜典、ジャン=クリストフ・スピノジや鈴木秀美など、豪華マエストロたちが登壇予定。前音楽監督・上岡敏之は、コロナ禍で中止となってしまった最終シーズンのプログラムを実現する。Composer in Residence and Music Partner を務める久石譲の新作初演も注目の聴きどころ。

左:宮内義彦 右:佐渡裕

会見で行われた対談の様子を一部抜粋——

宮内「名曲の名演奏ほど良いものはない。自分は高校、大学で音楽と出会ったのがクラシック音楽ファンとしての原点。最近は若い人のクラシックファンが少なくなっていることをなんとかしたい」
佐渡「兵庫県立芸術文化センターの芸術監督として、過去には年間50万人の入場者数を実現したこともある。学校でのアウトリーチや、それこそ野球選手に来てもらったり(笑)、オケを身近に感じてもらえる活動を墨田でも続けていきたい。墨田区には歴史があり、ものづくりの文化や人情もあります。定期演奏会とアウトリーチなどの活動はリンクしている。日本を代表するオーケストラであると同時に、本拠地とするすみだトリフォニーホール(今年開館25周年)で、ホールと街とオーケストラが肩を組み、小澤(征爾)先生が始めた地域に根ざしたオーケストラをつくりたい」
宮内「頂点が高くなるためには底辺が広くなければ。芸術性を尊びながら、日本に根付いたオーケストラを支持していただくことが大事。多くの企業や団体にサポートをいただいてきて、いまこの楽団は、前向きに進めている状況です」
佐渡「名曲にはやはり名曲である理由がある。(クラシック初心者にもよく知られた名曲を紹介する)〈すみだクラシックへの扉〉シリーズでは、初めてオーケストラを聴く人にも入りやすいプログラムにすべきだと思う。定期会員には、公開リハーサルや曲目解説、質疑応答などの機会も設けたい」

 途中、佐渡が墨田区の名所やものづくりの現場などを訪ねる「すみだ佐渡さんぽ」(楽団のYouTubeチャンネルで配信中)や、区内のオーケストラ部で指導する様子の動画も紹介された。また、佐渡が訪れた学校の生徒たちから寄せられたメッセージがまとめられたノートのプレゼントも。

生徒たちから寄せられたメッセージがまとめられたノートのプレゼント

佐渡「なるべく多くの学校を訪問しようと思っている。そして彼らがいずれ演奏会に足を運んでくれるようになること、ここまで達成することがアウトリーチ。次の世代に音楽のおもしろさを届けることはもちろん、アウトリーチがいろんなこととリンクして、次のクラシックファン、新日本フィルのファンに繋がっていくと思う。そして、満員のお客さんこそが、オケを育てることになると考えます。オーケストラ事業が地域に根ざしてこそオーケストラ、それこそが東京や日本を代表するオーケストラに繋がっていくと思います」

佐渡裕(c)Takashi Iijima

〈トリフォニー・シリーズ〉&〈サントリーホール・シリーズ〉
土日14:00/平日19:00

#648
2023.4/8(土)、4/10(月)
指揮:佐渡裕 ピアノ:辻井伸行
♪ ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18
♪ R.シュトラウス:アルプス交響曲 op.64 TrV 233

#649
2023.5/13(土)、5/15(月)
指揮:沼尻竜典 ヴァイオリン:ユーハン・ダーレネ
ソプラノ:砂川涼子 メゾソプラノ:山際きみ佳 テノール:清水徹太郎
合唱:調整中
♪ シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
♪ メンデルスゾーン:交響曲第2番 変ロ長調 op.52「讃歌」

#650
2023.6/24(土)、6/25(日)
指揮:シャルル・デュトワ
♪ ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
♪ ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲(1919年版)
♪ ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14

#651
2023.9/9(土)、9/11(月)
指揮:久石譲
♪ 久石譲:新作
♪ マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

#652
2023.10/28(土)、10/30(月)
指揮:佐渡裕
♪ ハイドン:交響曲第44番 ホ短調 Hob.Ⅰ:44
♪ ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 WAB104「ロマンティック」(ノヴァーク版)

#653
2024.1/19(金)、1/20(土)
指揮:佐渡裕 アコーディオン:御喜美江 朗読:白鳥玉季 ソプラノ:石橋栄実
♪ 武満徹:系図ー若い人たちのための音楽詩ー
♪ マーラー:交響曲第4番 ト長調

#654
2024.3/2(土)、3/3(日)
指揮:秋山和慶 ピアノ:児玉桃
♪ 細川俊夫:月夜の蓮〜モーツァルトへのオマージュ〜
♪ ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 op.27

すみだクラシックへの扉〈金曜〉〈土曜〉すみだトリフォニーホール
両日14:00

#14
2023.4/14(金)、4/15(土)
指揮:佐渡裕 ピアノ:辻井伸行
♪ レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲 P.172
♪ ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 op.43
♪ ドヴォルジャーク:交響曲第9番 ホ短調 op.95「新世界より」

#15
2023.6/9(金)、6/10(土)
指揮:デリック・イノウエ カウンターテナー:藤木大地
♪ メンデルスゾーン:劇音楽『夏の夜の夢』序曲 op.21
♪ モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調 K.425「リンツ」
♪ ヘンデル:歌劇『セルセ』 HWV 40 より「オンブラ・マイ・フ(なつかしい木陰)」
♪ モーツァルト:モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」k.618  ほか

#16
2023.7/7(金)、7/8(土)
指揮:ジョゼ・ソアーレス ギター:村治佳織
♪ ヴィラ・ロボス:ブラジル風バッハ第4番より I 前奏曲、IV 踊り
♪ ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
♪ ヒナステラ:バレエ音楽『エスタンシア』組曲 op.8  ほか

#17
2023.9/29(金)、9/30(土)
指揮:阿部加奈子 ピアノ:三浦謙司
♪ ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(管弦楽版)
♪ ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
♪ チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 op.74「悲愴」

#18
2023.10/20(金)、10/21(土)
指揮:鈴木秀美
♪ メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」 op.26
♪ シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」
♪ ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68「田園」

#19
2023.11/10(金)、11/11(土)
指揮:ジャン=クリストフ・スピノジ ヴァイオリン:HIMARI
♪ ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
♪ ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 嬰ヘ短調 op. 14
♪ ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』より「前奏曲と愛の死」
♪ ビゼー:カルメン組曲第1番より  ほか

#20
2024.2/16(金)、2/17(土)
指揮:久石譲
♪ 久石譲:I Want to Talk to You – for string quartet, percussion and strings –
♪ モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」
♪ ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』

#21
2024.3/15(金)、3/16(土)
指揮:上岡敏之 ピアノ:アンヌ・ケフェレック
♪ ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15
♪ シューベルト:交響曲第8番 ハ長調 D 944「グレイト」

新日本フィルハーモニー交響楽団
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