フランス的語感で描く崇徳上皇のドラマ
長くフランスを本拠に活動する作曲家・丹波明(1932〜)のオペラ《白峯》が、セントラル愛知交響楽団の定期演奏会と東京公演で初演される。
丹波は東京芸大卒業後、1960年に渡仏し、メシアンらに師事。能の音楽の研究でソルボンヌ大学から音楽博士号を授与されるなど音楽学の分野でも実績を残している。《白峯》は、江戸後期の作家・上田秋成の怪異小説『雨月物語』をベースに、作曲者自らが創意を加えて台本を書きおろした、全3幕12場の作品。2000年から8年近くかけて完成したという。
物語は平安末期、保元の乱(1156年)の一方の当事者である崇徳上皇を主人公に、鳥羽上皇や白河法皇、西行法師など、彼を取り巻く人々の対立、復讐などが描かれる。出演は崇徳の大野徹也(テノール)をはじめ、大塚博章、加賀清孝、中鉢聡、伊藤晴、飯田みち代他。セントラル愛知交響楽団(指揮・井﨑正浩)による演奏会形式での上演だ。
作曲者の解説によれば、歌の旋律を4度音程の「細胞音型」(旋律を形作る最小単位のモチーフ)で統一、各幕を日本の伝統的美学原則である「序破急」で構成するなど、いくつかの音楽上のルールによって司られているようだ。メシアン門下らしく2台のオンド・マルトノを用いたり、電気的な反響も利用するなど、新鮮な音響に彩られた未体験のオペラが誕生する予感。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)
セントラル愛知交響楽団
第136回 定期演奏会
9/26(金)18:30 三井住友海上しらかわホール
問:セントラル愛知交響楽団052-581-3851
第4回 東京公演
9/28(日)14:00 すみだトリフォニーホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
《白峯》公式ウェブサイト http://shiramine.net