豪華競演で名アリアを堪能する華やかなステージ
なんとも贅沢な顔合わせだ。人気と実力を兼ね備えたプリマドンナであるソプラノの森麻季と、おそらくクラシック歌手の中ではピカイチの知名度を誇るテノールの錦織健のデュオ・リサイタルが千葉県文化会館大ホールで開催される。題して「アメイジング・ソングス 〜愛と煌めきを歌にのせて〜」。まさに煌めきそのもののようなふたりの歌声を堪能できるプログラムだ。
たとえばプッチーニの歌劇《ラ・ボエーム》から〈冷たき手を〉は、詩人のロドルフォが、出会ったばかりのお針子ミミの手をとり自己紹介をするアリア。プッチーニ一流の流れるような美しいメロディを、錦織の甘く輝かしい高音が紡ぎ上げる様が聴こえるようだ。ベッリーニの歌劇《ノルマ》の〈清らかな女神よ〉は、ソプラノにとって屈指の難曲といわれるアリア。禁を犯して敵将ポリオーネと愛し合ってしまった巫女ノルマが祈りを捧げる歌だ。清楚で透明感のある森の歌声にかかれば、きっと一瞬でオペラの舞台である深い森へと誘い込まれることだろう。
ふたりの名歌手をサポートするのは、今や歌曲の世界でなくてはならないピアニストとして知られている山岸茂人。豊かな知識と深い楽曲理解に基づいた確実で安定感のある演奏に、多くの歌手たちがこぞって彼を指名するほど。今回も見事なピアノで支えてくれるに違いない。チケットの価格もリーズナブルで、しかも小中高生はなんと500円という破格。晩秋のひと時、ぜひご家族で美しい歌の世界に遊んでみてはいかがだろうか。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2022年11月号より)
2022.11/13(日)14:00 千葉県文化会館
問:千葉県文化振興財団043-222-0077
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