ここに歴史とドラマあり
デビュー58周年と55周年、しかも共に今なお最前線にいる…。この凄い2人が集うのが、9月の東京フィル定期だ。かたや1931年生まれの外山雄三。56年のデビュー以来、N響の正指揮者や、大阪、京都、名古屋、神奈川、仙台などのオーケストラの要職を歴任してきた指揮界の最重鎮にして、“日本クラシック”屈指のヒット曲「管弦楽のためのラプソディー」等で知られた大作曲家でもある。かたや今年デビュー55周年を迎えた中村紘子。“天才少女”として世界に名を馳せ、3700回を超える演奏会や50点近い録音を通じて聴衆を魅了してきた、邦人ピアニストの代名詞的存在だ。プログラムは、チャイコフスキーの幻想的序曲「ロメオとジュリエット」と交響曲第4番に、リストのピアノ協奏曲第1番を挟んだ、ダイナミックかつ濃密な名作集である。
実はこの2人、1960年のN響世界一周演奏旅行で共演している。あれから50余年にわたり日本音楽界を牽引してきた両者が、創立100周年記念ワールドツアーを成功裡に終えて間もない日本最古のオーケストラである東京フィルの公演で顔を合わせるのも、何かの縁だろうか。もちろん2人は今も、エネルギッシュでクリエイティブな第一線の音楽家。気迫漲るタッチ、芳醇なピアニズムで魅せる中村に相応しいリストの協奏曲、作曲家ならではの緻密で深い解釈を聴かせる外山のチャイコフスキー共に、生気や熱気をも湛えた熟達の至芸が期待される。
これは、半世紀を超えたキャリアを映す“音のドラマ”であり、我々が外山&中村&東京フィルの歴史を再認識する貴重な機会だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
第852回オーチャード定期演奏会
9/23(火・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp