パラジャーノフやピロスマニの作品を観ると実感できようが、ジョージア(グルジア)の文化の独自性には目をみはる。それはある種の「無時間性」と言えるだろうか。相曽賢一朗とヴァレリア・モルゴフスカヤによる「MEMORY」と題された、かの国の作曲家による本作品集もまったく同様。アザラシヴィリ作品から始まって民謡をも挟み込んでのチュビニシヴィリ作品に至るどの曲も民族的色調が濃く、極めて懐古的かつ感傷的で誠に美しい。ヴァイオリンとピアノというオーセンティックなクラシックの「形式」はそれらに格調の高さをもたらし、繰り返し聴くにも値する。理屈は不要、愉しめる一枚だ。
文:藤原聡
(ぶらあぼ2022年10月号より)
【information】
CD『追憶 MEMORY/相曽賢一朗&ヴァレリア・モルゴフスカヤ』
アザラシヴィリ:追憶、バレエ「ヘヴィスベリ」より〈女たちの踊り〉/ダヴィタシュヴィリ:ポエム/マチャヴァリアニ:民族舞踊/民謡「ヴァ・ギョルコ・マ〜私を愛していないの?」/ツィンツァゼ:メロディア/チュビニシヴィリ:ムハンバジ〜あなたをどれだけ心配しているかを知ったなら 他
相曽賢一朗(ヴァイオリン)
ヴァレリア・モルゴフスカヤ(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCX-00101 ¥3300(税込)