奥村愛 デビュー20周年コンサート ヴァイオリンの旅路

18世紀ヴァイオリンと歩んできた物語を辿って

(c)小島竜生

 旅人の名前は「カミロ・カミリ」で1738年イタリア生まれだ。これまで284年生きてきたけれど、まだ生きるつもりらしい。現在のパートナーは奥村愛といって、もう30年近い付き合い。もともとカミロ・カミリは彼女の父親と関係があったらしく、奥村家との付き合いは何年になるのだろう? そもそも、どうやってイタリアから日本にやって来たのか、興味は尽きない。

 いや、失礼。「ファミリーヒストリー」ではなかった。ヴァイオリニストとして様々な場所で活躍を続ける奥村愛がデビュー20周年を迎え、記念のコンサートを縁のある小金井 宮地楽器ホールで開催。実は、同ホールも開館10周年というおめでたい年なのである。しかし、いわゆるお祝い的なコンサートではなく、色々な趣向が用意されているようだ。ヴィヴァルディからパガニーニ、クライスラーと技巧的な作品をちりばめ、そこに山中惇史(ピアノデュオのアン・セット・シスとしても活躍)が編曲した「ジプシーメドレー」も加わる。さらに脚本を横山一真が担当し、声優の甲斐田裕子がナレーターを務め、河野紘子(ピアノ)と岡本拓也(ギター)が共演する。そこでどんな物語が展開されるのか、どんなアレンジでそれぞれの作品が演奏されるのか、想像がつかない。「リーディングコンサート」という副題も付けられているので、どうやら旅人が主人公になるようだが、さて、いかなる世界が待っているのだろう。ヴァイオリンという楽器の不思議を、奥村はきっと優しく解き明かしてくれるはずだ。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年10月号より)

2022.10/15(土)14:00 小金井 宮地楽器ホール
問:小金井 宮地楽器ホール チケットデスク042-380-8099 
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