鈴木理恵子(ヴァイオリン)& 若林顕(ピアノ)

阿吽の呼吸で表現する、こだわりのプログラム

左:若林顕 右:鈴木理恵子
(c)Wataru Nishida

 それぞれがソリストとして活躍しながら、デュオでも精力的に演奏活動を展開してきた鈴木理恵子と若林顕。音の調和はもちろんだが、対話の楽しさを伝えてくれる即興的なやりとりは、確かな技術、互いの厚い信頼があるからこそ生まれてくるものであろう。東京での4年ぶりのリサイタルとなる今回は「シンクロ・リサイタル」というタイトルを冠しており、まさに二人によるアンサンブルの密度の高さを象徴している。モーツァルトからグリーグ、R.シュトラウスに至るプログラムの多彩さも魅力的だ。

鈴木「ピアノという楽器の、オーケストラに匹敵する多彩な響きの可能性をぜひお届けしたいというところから、まずグリーグの『ヴァイオリン・ソナタ第3番』とR.シュトラウスの『ヴァイオリン・ソナタ』が決まりました」

若林「さらに、私たちの大切なレパートリーであるモーツァルトの『ヴァイオリン・ソナタ K.377(374e)』、新たな試みとしてドヴォルザークの『4つのロマンティックな小品』を加えています。どれも非常に深い内容を持ち、祈りや希望をも感じさせる作品です。世界が厳しい状況にある今の時代だからこそ、何か最後にエネルギーが集約していくような流れにしたいという想いを込めたプログラムになりました」

 鈴木と若林はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタの全曲録音に取り組むなど、この作曲家に特に力を入れてきた印象がある。今回演奏されるK.377(374e)のソナタは、演奏機会は少ないが、繊細な魅力に溢れた作品だ。

鈴木「ヴァイオリニストにとって、モーツァルトは原点であり鬼門でもあります。オーケストラのオーディションでもモーツァルトを聴けばすぐにどんな奏者かわかってしまうといわれていますし、実際に持っているものすべてをさらけだしてしまうようなところがあります」

若林「日常の様々な出来事や会話、自然描写まで、ありとあらゆるものが込められていますね。演奏するたびに発見があり、特にアンサンブルをしていると毎回“こんなに美しいものがあったのか”と驚かされます」

 続くグリーグにドヴォルザーク、R.シュトラウスの作品は民族的な要素も多く取り入れられ、それぞれがまったく違った色彩感を放つ。

鈴木「言語と音楽には非常に密接な関係がありますが、特に北欧は中央ヨーロッパとまったく発音の仕方が違い、それが奏法やアクセントのスピード感にも表れています。そのような違い、そして作曲家が作品に込めた想いを音にして皆様にお伝えしたいです」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2022年10月号より)

鈴木理恵子 & 若林顕 シンクロ・リサイタル 2022
2022.11/3(木・祝)14:00 東京文化会館(小)
問:アスペン03-5467-0081 
https://www.aspen.jp

他公演
2022.9/18(日) 高崎シューベルトサロン(ピアノプラザ群馬内)(0120-40-3215)
10/5(水) 静岡音楽館AOI(静岡音楽友の会054-253-7789)
10/23(日) 仙台中央音楽センターIVy HALL(HAL PLANNING 022-264-1846)