In memoriam ラルス・フォークト

Lars Vogt 1970-2022

 ドイツ出身のピアニストであり、指揮者としても活躍したラルス・フォークトが9月5日、51歳の若さで亡くなった。昨年3月、癌が発覚したことをSNSで公表し、闘病を続けていた。

(c)Giorgia Bertazzi

 ドイツのデューレン生まれのフォークトは、1990年、リーズ国際コンクールで第2位に入賞したのを皮切りに国際的なキャリアをスタートさせた。その後はアバド、ラトルら世界的指揮者のもと各国のオーケストラと共演し、2003/04シーズンにはベルリン・フィルのピアニスト・イン・レジデンスを務めていた。

 1998年からは毎年ドイツで開催される室内楽フェスティバル、シュパヌンゲン音楽祭を主宰。2015年に英国のノーザン・シンフォニア、2020年にはパリ室内管弦楽団の音楽監督に就任するなど指揮者としての評価も高く、ピアノ協奏曲を弾き振りで演奏することも多かった。世界的なアーティストからの信頼も厚く、クリスティアン・テツラフと多くの録音を残している。今年3月に発売されたアルバムでは、パリ室内管とメンデルスゾーンのピアノ協奏曲の弾き振りが収録されている。 

 日本においてもNHK交響楽団をはじめとするオーケストラのソリストとして度々出演したり、ラ・フォル・ジュルネにも参加するなど幅広いクラシック・ファンから人気を集めた。今年10月にも、新日本フィル、オーケストラ・アンサンブル金沢とベートーヴェンのピアノ協奏曲の弾き振りが予定されていた。

 熱量が高くダイナミックでありながら、知性に裏打ちされた歯切れの良さ、そして美しさが常に共存していて、演奏後にはその笑顔も相まって会場に清々しい余韻を残していた。